オレオサイエンス
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総説
粉末リパーゼを用いたエステル交換による食用油脂の工業生産
根岸 聡
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2004 年 4 巻 10 号 p. 417-423

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抄録
リパーゼによるエステル交換は, 常温, 常圧で反応できるため反応物の劣化が少ないだけでなく, 副反応が起きにくく基質特異性を有しているなど優れた方法である。しかし, 限られた領域でしか実用化されていないのが現状である。その理由はリパーゼ反応にかかるコストが高く, デリケートな反応で反応装置も複雑となってしまうためである。
通常, 反応にはリパーゼを固定化して用いるが, 固定化には必ず担体となる物質が必要となり, 比活性も固定化することにより低下する。よって, 粉末のままで反応できれば担体の費用を節約できるだけでなく, 単位体積および単位重量あたりの活性をあげることができ反応系をコンパクトにすることが可能と考え, 粉末リパーゼによる反応の検討を行った。
その結果, エステル交換反応における最適温度は85℃, 130℃という高温でも最適値の20%の活性を有する反応性を得ることができた。さらに, 80℃における活性の半減期は380時間であった。
我々はこの粉末リパーゼによるエステル交換反応を食用油の工業生産に応用して, 現在, 「中鎖脂肪酸」や「植物ステロール」を含んだ健康オイルなど数種類の食用油を実生産している。
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© 2004 公益社団法人 日本油化学会
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