抄録
有機低分子化合物を適切に分子設計することで, 非共有結合でつながったメゾスケールの超分子ポリマーが得られる。しかし超分子材料を作製するためには, 超分子ポリマーをマクロスケールで組織化する必要がある。このために, 非極性で柔軟なソフトセグメントを集積過程での分子レベルのクッションとして用いる分子設計, およびマクロスケールの組織化を行うために機械的な力を用いるという方法を用いた。その結果, 超分子繊維, ゲル, フィルムなどを作製することができた。超分子繊維の場合, 水素結合主鎖をソフトセグメントで包むような分子設計を行い, 溶融もしくは加熱紡糸をすることで, 一次元水素結合主鎖が繊維軸に配向した柔軟な超分子繊維が得られた。また直鎖状水素結合主鎖がさらに水素結合で架橋された二次元水素結合網の上下をソフトセグメントで挟むと, シート状の構造体が形成されるが, この際溶媒分子がシート問に取り込まれてオルガノゲルを形成する。さらに極性のオキシエチレン鎖がシート状構造体表面に位置するような分子設計をすると, シート状構造体の三次元的な積層で柔軟な超分子フィルムを作製することができる。これらの結果は, ソフトセグメントを用いた分子設計の有効性を示すものといえる。