オレオサイエンス
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5 巻, 6 号
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総合論文
  • 階層的次元制御による水素結合型超分子材料設計
    荒木 孝二, 李 〓, 吉川 功
    2005 年 5 巻 6 号 p. 265-272
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    有機低分子化合物を適切に分子設計することで, 非共有結合でつながったメゾスケールの超分子ポリマーが得られる。しかし超分子材料を作製するためには, 超分子ポリマーをマクロスケールで組織化する必要がある。このために, 非極性で柔軟なソフトセグメントを集積過程での分子レベルのクッションとして用いる分子設計, およびマクロスケールの組織化を行うために機械的な力を用いるという方法を用いた。その結果, 超分子繊維, ゲル, フィルムなどを作製することができた。超分子繊維の場合, 水素結合主鎖をソフトセグメントで包むような分子設計を行い, 溶融もしくは加熱紡糸をすることで, 一次元水素結合主鎖が繊維軸に配向した柔軟な超分子繊維が得られた。また直鎖状水素結合主鎖がさらに水素結合で架橋された二次元水素結合網の上下をソフトセグメントで挟むと, シート状の構造体が形成されるが, この際溶媒分子がシート問に取り込まれてオルガノゲルを形成する。さらに極性のオキシエチレン鎖がシート状構造体表面に位置するような分子設計をすると, シート状構造体の三次元的な積層で柔軟な超分子フィルムを作製することができる。これらの結果は, ソフトセグメントを用いた分子設計の有効性を示すものといえる。
  • 小木曽 真樹
    2005 年 5 巻 6 号 p. 273-279
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    ナノテクノロジーにおいて, ナノデバイスを構築する上で一次元ナノ構造体は重要なターゲットの一つである。生物は, 水素結合, 疎水性相互作用, 静電相互作用などの非共有結合を用いてペプチド, 糖, 核酸塩基, 脂質などの生体物質を組み上げて, 特にメゾスケールの大きさからなる生体組織を構築している。ペプチドはα-ヘリックスやβ-シートに代表される二次構造をアミド基問の水素結合ネットワークにより形成できる。ペプチドを脂質分子に導入したペプチド脂質の中にはペプチド間の水素結合ネットワークにより一次元ナノ構造体を形成するものも知られている。我々はこのレビューにおいて, 特に双頭型ペプチド脂質による一次元非共有結合性高分子の合成について報告する。双頭型脂質は通常の脂質に比べて膜融合などを起こしにくいことから, 高い安定性が期待される。オリゴグリシン双頭型脂質は水中でポリグリシンll型の二次元水素結合ネットワークを形成することで脂質マイクロチューブやナノチューブを与えた。それに対して, バリルバリン双頭型脂質はβ-シート的な一次元水素結合ネットワークを形成することでナノファイバーを与えた。ナノファイバーの表面にはカルボン酸が存在するため, 遷移金属イオンを一次元的に組織化する足場となる。この金属イオンを還元することで銅ナノ微粒子を一次元的に組織化した研究例も示す。
  • 山田 哲弘, 長谷川 健
    2005 年 5 巻 6 号 p. 281-288
    発行日: 2005/06/01
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    ペプチド基を含む両親媒性分子のキャストフィルム中には多重水素結合がβ-シート構造として観察できる。このキャストフィルムは透明で自己支持性もあるのだが,大変脆い。このことは,キャストフィルムの機械強度を向上させるために,β-シート構造を固定する相互作用も必要であることを示している。そこで,我々はペプチド基の側鎖を利用することにした。ペプチドがβ一シート構造を形成しているとき,隣接アミノ酸の側鎖はシートの表と裏に位置しているが,方向はシート面にたいしてほぼ直角である。このため,異なるβ-シートの側鎖同士は噛み合うので,ペプチドがロイシンで,かつ3残基以上あれば,独特な入れ構造を形成しβ-シート構造同士を固定すると考えられる。この作用をロイシンファスナーと呼ぶが,β-シート構造ができなければ生じない作用である。我々の系ではモノマーが自己組織化して超分子を形成した後,その構造が水素結合で固定されてβ-シート構造を作り,そのβ-シート構造はロイシンファスナーでさらに構造化されて,ついには超分子ポリマーを形成する。すなわち,水素結合とロイシンファスナーは階層的に作用している。この論文の中で,我々は素構造となる分子を階層構造化すれば,共有結合で素構造を連鎖しなくても柔軟な自己支持性フィルムになることを示した。
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