抄録
臭化セチルトリメチルアンモニウム (CTAB) とサリチル酸ナトリウム (NaSal) からなるひも状ミセルの水溶液の非線形粘弾性について調べた。CTAB濃度は0.1mol l-1としNaSal濃度を0.07からO.4moll-1まで変えた。いずれの試料においても, 線形粘弾性は単一緩和で記述できた。また, いずれの試料においても, ずり流動印可後のずり応力σと第一法線応力差N, の成長において, ずり速度が緩和時問の逆数より大きいある臨界ずり速度を超えた場合に, ひずみ硬化が観測された。ひずみ硬化領域ではσとN1の問には単純な弾性体の関係が成立し, ひずみ硬化は, 弾性率がひずみ依存すると考えればよいことがわかった。弾性率のひずみ依存性は, 鎖の伸びきりを考慮した網目理論で記述できた。伸びきり挙動から鎖のセグメントを評価することができた。定加重印可時のクリープ応答についても測定した。その結果, 加重が線形弾性率より大きくなると, 回復コンプライアンスが増加し, 流動によって溶液構造が変化していることが示唆された。