オレオサイエンス
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特集総合論文
薬物担体の素材としてのリン脂質および類似構造を持つ脂質の性質
二井 智子
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2006 年 6 巻 7 号 p. 363-370

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抄録
微粒子キャリアーはDDSの有望なツールとして盛んに研究が行われてきた。本報では, 天然および合成リン脂質を用いて調製したリボソームとエマルションの粒子サイズに影響を及ぼす要因を検討した。合成リン脂質を用いた実験の結果より, リン脂質が二重膜を形成して水中に分散するリボソームではリン脂質の物理的形状が, リン脂質が油水界面に配向するエマルションではリン脂質の親水基と疎水基のバランス (HLB) が, それぞれ粒子サイズに影響を及ぼすと考えられた。天然リン脂質を用いたエマルションの粒子サイズは, 飽和度の高いリン脂質を用いた場合, 合成リン脂質のデータから求めた回帰関数による予測粒径と実測値が比較的近い値を示した。また, リン脂質の構造に類似し, リボソームの素材であり, 遺伝子送達のキャリアーとして用いられるカチオニック脂質および抗悪性腫瘍効果が期待されるアルソノ脂質を例に取り, これらの脂質の構造と調製したリボソームの性質に関する報告の一部を紹介する。リン脂質により調製されたリポソームに関する情報の蓄積が, 類似の脂質を用いたリボソームの形成に関わる種々の要因についても考察の糸口を与える可能性があると考えられる。
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© 2006 公益社団法人 日本油化学会
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