抄録
水産物中に含まれる脂溶性成分の有効利用を目指し, それらの機能性評価や高機能化に関して研究を行った。ワカメなどの食用海藻中に含まれるフコキサンチンは, ヒト白血病細胞や大腸癌細胞に対してアポトーシスを誘導した。このようなアポトーシス誘導能は, ホヤから分離したフコキサンチンの類縁カロテノイドであるフコキサンチノールやハロシンチアキサンチンでより顕著であることを見い出した。また, フコキサンチンは, 糖尿病/肥満マウスの内臓脂肪の蓄積や高血糖を改善する作用を示した。一方, 優れた生理機能を有し幅広い利用が期待できる高度不飽和リン脂質の調製には, 酵素的合成反応が有効であった。とくに, 必須水分代替物の利用により反応収率が顕著に上昇することを示した。また, 高度不飽和脂肪酸から新規な機能性が期待される環状ヒドロキシ脂肪酸を調製するには生物変換反応が有効であった。