オレオサイエンス
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特集総合論文
飽和脂肪酸→コレステロール→冠動脈疾患を再検する
浜崎 智仁糸村 美保
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2008 年 8 巻 10 号 p. 429-436

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抄録
飽和脂肪酸は危険な油との認識があるが, その理論的根拠はしっかりしていない。Keysの式から, 飽和脂肪酸の摂取により血中コレステロールが増え, 心筋梗塞が増えるというのが, 一般的な飽和脂肪酸悪玉論である。しかし, 日本においては, コレステロール (あるいはLDL-コレステロール) と心筋梗塞の関連はあまり強固ではない。少なくとも女性では老人保健法による健診レベルでの疫学調査をはじめ日本で証明されたことはほとんどない。男性でも家族性高コレステロール血症を除いて計算すれば, 有意差のあるデータとはならないはずだ。総死亡率に至っては5年程度の追跡を中心としたわれわれのメタ分析によると男性では総コレステロール値が高い方が死ににくいし, 女性でもコレステロール高値は危険因子とはなっていない。以上のように, 飽和脂肪酸→コレステロール→心筋梗塞の図式は考え直す時期に来ている。
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© 2008 公益社団法人 日本油化学会
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