オレオサイエンス
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8 巻 , 10 号
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特集総合論文
  • 臨床の立場から
    川村 光信
    2008 年 8 巻 10 号 p. 405-412
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    わが国の冠動脈疾患の予防や進展抑制に対する食事療法は, 糖尿病食を基に始められることが多い。通常の糖尿病食の栄養素配分は, カロリー百分率で, 糖質 : タンパク質 : 脂質=60% : 15% : 25%とされているが, 冠動脈硬化の進行に関与する, 最大の栄養素は脂質と目されている。米国を中心とした大規模研究などから, 脂質の総量は全摂取カロリーの25%以下, とくに飽和脂肪酸は7%以下に抑えることが推奨されている。しかし, 問題は脂質ではなく, 過剰なカロリーによる肥満やインスリン抵抗性であろうとの見解もある。さらに最近のさまざまな大規模疫学研究や食事介入試験からは, 冠動脈疾患に対する脂質, とくに飽和脂肪酸による影響は, あるとしても, 同時に摂取される一価不飽和脂肪酸や多価不飽和脂肪酸によって多彩に変化することが明らかとなってきた。また, 日常の食生活にかなり差異のある欧米のデータをそのまま日本に当てはめ得るのか, 集団としてではなく, 個々人に対してはよりきめ細かな食事療法が必要ではないのか, などの疑問が残されており, 今後さらに日本独自の研究が必要と思われる。
  • 今泉 勝己
    2008 年 8 巻 10 号 p. 413-419
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    トランス型モノ不飽和脂肪酸に代わり得る適切な脂肪を創ることが望まれている。動物やヒトの研究から, ステアリン酸は他の飽和脂肪酸, 12 : 0, 14 : 0や16 : 0と比較してコレステロール代謝について異なった影響を及ぼすことが指摘されている。このような違いは, リノール酸に由来する摂取エネルギーの量によって影響を受けることから, よく制御された食事環境の基で血清コレステロールや動脈硬化に対する影響を評価することが肝要である。ステアリン酸の恩恵的な効果は, 総コレステロール対HDLコレステロール比を重回帰係数で評価した, 60例のメタ分析によって確認されている。トリグリセリドのsn-2位に存在する飽和脂肪酸は心臓疾患の危険因子に対して好ましくないとみなされてきたが, sn-1 (3) 位に飽和脂肪酸が多いシアバターあるいはココアバターのエステル交換は食後高脂血症や血液凝固因子の濃度に対して恩恵的であった。これらの研究は, トランス型モノ不飽和脂肪に代わるより優れた構造脂質の開発に寄与するであろう。
  • 生活習慣病に対する飽和脂肪酸悪玉説の検証
    奥山 治美, 山田 和代, 宮澤 大介, 安井 裕子, 市川 祐子
    2008 年 8 巻 10 号 p. 421-427
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    “動物性脂肪とコレステロールの摂取を減らして高リノール酸植物油を増やすと, 血清コレステロール値が下がって心疾患が予防できる” というコレステロール仮説は誤っていた。この説に基づく指導を長期に続けても血清コレステロール値は下がらず, むしろ心疾患死亡率が上がり, 寿命が短くなることがわかった。一方, 大部分の人 (40~50歳以上の一般集団) にとっては, 血清コレステロール値が高い群ほど癌死亡率が低く長生きであった。すなわち, “飽和脂肪酸に富む動物性脂肪が血清コレステロール値を上げ, 心疾患の危険因子となっている”, と考える根拠は崩壊した。心疾患の危険因子はコレステロールではなく, 摂取脂肪酸のn-6/n-3バランスであった。最近トランス脂肪酸 (水素添加植物油) の安全性の問題が再びクローズアップされ, 代替油脂としてパーム油がわが国の供給植物油の20%を占めるまでに至っている。しかしパーム油は動物実験で発癌促進, 寿命短縮などの有害作用を示す。他にも動物に類似の有害作用を示す食用油が数種ある。このような安全性の確立していない植物油に対し, 動物性飽和脂肪 (バター, ラードなど) の安全性が強調できる。メタボリック症候群の危険因子はタンパク質, 糖質を含めた栄養素の過剰摂取による過栄養 (over-nutrition) であり, 動物性脂肪は肥満にならない範囲で安全に摂取できる。
  • 浜崎 智仁, 糸村 美保
    2008 年 8 巻 10 号 p. 429-436
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    飽和脂肪酸は危険な油との認識があるが, その理論的根拠はしっかりしていない。Keysの式から, 飽和脂肪酸の摂取により血中コレステロールが増え, 心筋梗塞が増えるというのが, 一般的な飽和脂肪酸悪玉論である。しかし, 日本においては, コレステロール (あるいはLDL-コレステロール) と心筋梗塞の関連はあまり強固ではない。少なくとも女性では老人保健法による健診レベルでの疫学調査をはじめ日本で証明されたことはほとんどない。男性でも家族性高コレステロール血症を除いて計算すれば, 有意差のあるデータとはならないはずだ。総死亡率に至っては5年程度の追跡を中心としたわれわれのメタ分析によると男性では総コレステロール値が高い方が死ににくいし, 女性でもコレステロール高値は危険因子とはなっていない。以上のように, 飽和脂肪酸→コレステロール→心筋梗塞の図式は考え直す時期に来ている。
  • 藤原 葉子
    2008 年 8 巻 10 号 p. 437-446
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    飽和脂肪酸は血中コレステロール値を上昇させ, 虚血性心疾患のリスクを増加するため, これまで, 脂肪摂取エネルギー比と飽和脂肪酸の低い食事が推奨されてきた。近年, 生活習慣病と肥満との関連が明らかとなり, 虚血性心疾患リスクとLDLおよびHDLコレステロールとの科学的根拠も蓄積した。また, 高炭水化物食による血中TGの増加が明らかになったことから, 脂肪の摂取割合や脂肪の質についても, 総エネルギーや炭水化物とのバランスの中で再評価・検討する必要が出てきた。ニュートリゲノミクスの手法を用いて, 食事組成の遺伝子発現プロファイルを検討した最近の研究からは, 食事という長期的な環境因子が身体全体や血中脂質に与える影響は, 組織における脂肪酸そのものの直接的な作用によるよりも, カロリー制限による脂肪を減少させるほうが大きいことを示している。飽和脂肪酸はLDLコレステロールを増加するがHDLも増加する。飽和脂肪酸接取は, 対象者や食事組成によってはメリットとなる場合もある。脂質の量や質の摂取は, 炭水化物摂取量や個人レベルを考慮する必要があるだろう。
  • 芦部 文一朗, 本島 清人
    2008 年 8 巻 10 号 p. 447-454
    発行日: 2008年
    公開日: 2013/06/01
    ジャーナル フリー
    ゲノム解析が進み, 脂肪酸代謝に関わる酵素と調節因子の数の多さと, 多様性と多重性が明らかになった。遺伝子産物である酵素の発現と活性, それらの調節の詳細については今後の研究を待たなければならないが, 現時点でも食物由来の飽和および不飽和脂肪酸の体内脂質代謝に及ぼす影響を分子レベルで考察を始めることが可能となった。中でも, 過剰な脂質が細胞機能を障害する脂肪毒性は, 多くの疾患の原因と考えられており, その発生機構については多くの研究がなされている。本総説では, まず脂肪酸リモデリング系について, その食物由来の脂質に対する適応システムとしての重要性と柔軟性を概説する。次いで脂肪毒性の発生機構として提出されている代表的な仮説の検証を行いながら, 防御機構としての脂肪酸リモデリング系と脂肪滴形成の組織特異的な意義について述べる。
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