2021 年 90 巻 2 号 p. 91-97
半導体デバイス製造において,プラズマプロセス中に発生する欠陥は,デバイス性能に大きな影響を及ぼす.最先端ロジック回路用FinFET,高効率太陽電池,高感度イメージセンサでは,欠陥の低減が喫緊の課題である.一方,次世代メモリや量子デバイスでは,単一電子制御の点で欠陥の積極的活用が期待される.しかしながら,プラズマプロセスを用いるデバイス製造において,欠陥の発生や修復に関する知見は十分に得られていない.これは,半導体表面へのプラズマの作用が非平衡かつ非定常であり,さまざまな物理現象や化学反応が複雑に関与するためである.また,プロセス中にその場で欠陥を検出しプロセスとの相関を調査する手法が確立されていないことにもその一因がある.本稿では,プラズマプロセス中に発生する欠陥(プラズマ誘起欠陥:plasma-induced defects)をその場でリアルタイムに検出する手法を紹介し,欠陥の発生と修復に関する最新の研究成果を解説する.具体例として,水素化アモルファスシリコンの成長,そして,結晶シリコンの表面パッシベーションを取り上げる.