2022 年 91 巻 8 号 p. 498-502
ナノポアとナノギャップは,1個の生体分子を電流で計測するナノデバイスである.ナノポアの計測対象は,DNA,RNA,タンパク質,ウイルス,および細菌と幅広い.ナノポアは,DNAシークエンサーとして製品化され,ウイルス・細菌計測装置としても製品化されている.ナノギャップは,DNA,RNA,ペプチドなどの1nm程度の生体分子を計測対象とする1分子量子シークエンサーのコアデバイスである.ナノポアとナノギャップは,生物,薬学,および医学に新たな発見をもたらし,革新的な疾病診断法になりつつある.この2つのナノデバイスは,計測システムのハードウエアの構成を変えることなく,計測対象に合わせたナノ構造の最適化と計測データの機械学習により多種の生体分子を検出・識別するデジタルプラットフォームである.ナノポアを用いた新型コロナウイルス検査法と,ナノギャップを用いた大腸がんのマイクロRNA解析を紹介する.