日本歯周病学会会誌
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原著
慢性歯周炎患者における喫煙および受動喫煙のGCFエラスターゼ活性に及ぼす影響
伊藤 弘沼部 幸博
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2007 年 49 巻 3 号 p. 198-206

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抄録

歯周組織破壊と喫煙の関連は,疫学的に報告されているものの,そのメカニズムは不明であるが,宿主の反応が関与していると考えられている。本研究の目的は,喫煙および受動喫煙が顆粒球由来GCFエラスターゼ活性に対する影響と歯周組織破壊に関連する生化学的マーカーの検索を目的とした。
被験者は,中等度慢性歯周炎患者68名(非喫煙者34名,喫煙者34名,すべて男性)を対象とした。検索項目は,臨床パラメーターとしてPD,PlI,GI,GCF量を,生化学的項目は,唾液中コチニン量,細胞外エラスターゼ活性,α1-antitrypsin(A1AT) 量,elastase A1AT complex (E-A1AT) 形成量とし,Enzyme assayとELISAを用いた。
本研究の結果より以下の結論を得た。
1,喫煙者は,非喫煙者と比較してGIは有意に低かった。
2,唾液中コチニン量から,自己申告による非喫煙者中受動喫煙者は22名,非喫煙者は12名であった。
3,非喫煙者に対して受動喫煙者・喫煙者は,細胞外エラスターゼ活性が有意に低かった。
4,非喫煙者・受動喫煙者,喫煙者に対して,E-A1AT形成量とA1AT 量は有意差を認めなかった。
5,喫煙者の唾液中コチニン量に対し,A1AT 量は弱い負の相関を示した。
以上の結果より,受動喫煙・喫煙より顆粒球由来GCFエラスターゼ活性が変化し,歯周組織防御機構の不均衡を示し,インヒビター量の変化が関与していると考えられた。すなわち,GCF中におけるインヒビター量の変化が,受動喫煙・喫煙に対する歯周組織破壊の生化学的なマーカーの一つと考えられた。

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© 2007 特定非営利活動法人 日本歯周病学会
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