抄録
医療現場では、様々な倫理的問題が存在する。医師、看護師などの医療の専門家には、倫理的問題に気づくととともに、問題解決が求められる。医療現場で働く看護職に対する倫理教育は、日本において、OJTあるいは Off-JTにて必要不可欠とされている。しかしながら、医療現場で働く看護職のための倫理教育プログラムは、各々の医療施設の部署に委ねられている。合意形成の理論と方法論を用いた倫理教育は、受講者が倫理的リスクに気づくとともに関係者と多様な価値を共有し、問題解決のための方法論の理解と実施ができることを目標とする。本研究の目的は、医療現場で働く看護職に対する合意形成とファシリテータ教育を取り入れた倫理教育の事例を紹介した上で、医療現場の話し合いのファシリテータで必要な要素を考察することである。臨床現場の話し合いで必要なファシリテータの要素は、①話し合いの計画と事前準備、②会の方向性を示すコミュニケーション、③参加者の関心懸念を引き出すコミュニケーション、④確認、言い換える、まとめるコミュニケーション、⑤個人と全体の両方の視点でみる力、⑥計画遂行と臨機応変に対応することの両方をもつこと、⑦見られていることへの意識、⑧雰囲気と環境づくりである。合意形成の方法を用いた倫理教育プログラムとファシリテータ教育を一度に統合して行う意義は、臨床現場で直面する倫理的問題に対して、気づくことと具体的な行動をつなげて考えられることが示唆された。