抄録
本研究で着目する歴史的風致は、2008年に施行された歴史まちづくり法で新たに示され、無形の活動とその舞台となる有形の建造物及びその周辺環境を一体的に捉えることとして定義された概念である。2020年1月までにこの歴史まちづくり法に78市町が認定されており、第1期認定計画が終了して第2期へと移行する認定都市が現れ始めるなど、歴史的風致という新しい概念が多くの都市に浸透し、活用されていると捉えることができる。本研究では、認定都市の78市町へアンケート調査を実施し、歴史的風致を構成する要素を分析し、また各重点区域の成り立ちと歴史的風致の関係性を考察することで、歴史的風致の傾向と特徴を把握することを試みた。本研究における成果は以下の通りである。①歴史的風致645件を網羅的に分析した結果、「信仰に関わる行事(祭礼などの年中行事)」を無形の活動として、「神社」を有形の建造物、「活動ルートの範囲」をそれらに関する周辺環境と設定することが我が国の典型的な歴史的風致であることを示した。②「重点区域の核となる文化財」を活動場所の中心とする歴史的風致のみを分析した結果、「都市の成り立ち」別で異なる傾向を有することが明らかとなった。中でも、「城下町」を起源とする重点区域が最も多い割合を示し、また他の類型よりも多様な活動内容や重点区域の範囲の取り方がされていた。