霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: A-22
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口頭発表
コンゴ民主共和国ワンバ地区における野生ボノボのパーティサイズの季節変化
Mbangi MULAVWA*古市 剛史
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抄録
1996年以来内戦で中断されていた野生ボノボの研究も、内戦の終結を受けてコンゴ民主共和国各地で再開されている。1973年以来日本人研究者が取り組んできたワンバ地区での研究も昨年から再開し、コンゴ人研究者との共同で、遊動域内の果実量、遊動ルート、遊動パーティのサイズと構成、採食行動などの基礎的データの収集を通年継続して行っている。ボノボの研究が中断している間に、大型類人猿の生態学的研究は大きく進み、これと比較すべきボノボの研究成果が待たれている。内戦前のワンバのボノボの研究は、どちらかといえば行動や社会構造に関するものが多く、生態学的研究の成果も、行動観察のために行っていた餌付けの影響を指摘して批判されることがあった。今回研究を再開するにあたっては、行動への影響と病気の伝染の防止のために餌付けを全面的に中止し、主として生態学的側面に重点をおいた研究を行っている。この研究ではまず、雨量、果実量、遊動パーティサイズを比較し、利用可能な果実量の季節変化が遊動パーティサイズに与える影響を評価する。果実量は5本計約22kmのライントランセクトに沿った落果果実量で推定し、パーティサイズについては、チンパンジーの研究でも用いられている1-hour party sizeを記録した。予備的な分析では、ワンバのボノボは餌付けしていたころとあまり変わらない安定したパーティを形成して遊動しており、少果実期にもパーティはあまり小さくならない。チンパンジーでも、食物条件の厳しいところでは果実量がパーティサイズの制限要因になるものの、ある程度以上食物のあるところでは、はっきりした制限要因にならないとの報告がある。ボノボのデータを含めてアフリカ各地のPan属の遊動パターンの季節変化を比較すれば、Pan属の熱帯森林環境への適応形態とその柔軟性の全体像をとらえることができる。
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© 2004 日本霊長類学会
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