霊長類研究 Supplement
第20回日本霊長類学会大会
セッションID: P-50
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ポスター発表
人里に生息するニホンザルの晩秋期の採食様式
*大田原 由紀子加賀谷 隆
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抄録
近年、各地でニホンザルによる猿害が生じている。猿害を抑止するには人里に生息する個体群の管理が必要であり、そのためには人里での採食品目、採食量、採食時間等を知ることは重要である。本研究は、神奈川県に生息するニホンザル個体群の1群(S群)を対象に、晩秋期の採食様式を調べることで、人里の食物に対する晩秋期の依存度、採食の時(空)間パターンを解明することを目的とする。個体識別された成体のメスを中心に、2003年11月の16日間、終日(6:00~18:00)個体追跡調査を行った。個体を判別した上で、観察により採食量を採食品目ごとに評価し、さらにエネルギー量に換算した。採食物は猿害と認識されるような農作物や果樹を栽培物、それ以外を非栽培物に区分した。S群の個体は、晩秋期の摂取エネルギーのうち45%を栽培物に依存しており、庭木のカキと農作物がその大半を占めていた。非栽培物からの摂取エネルギーは、スダジイの実のみで38%を占めていた。採食一回に費やす平均時間は非栽培物では7分、栽培物では2分、エネルギーの平均摂取速度は非栽培物では12kcal/分、栽培物では38kcal/分であった。1日の採食時間の推移をみると、栽培物、非栽培物とも正午から午後にかけて採食に費やす時間は長くなっていた。また、摂取エネルギー速度でみた場合には、13~14時に栽培物で顕著なピークが認められた。S群のサルは晩秋期の摂取エネルギーの約半分を、栽培物に依存していることが明らかとなった。栽培物では1個当たりの可食部重量が大きいため採食効率がよく、短時間に多量のエネルギーが摂取できるため、好んで利用されると推察される。また、S群では午後の採食が多く、栽培物採食が正午過ぎに急激に増加していたが、これは栽培物は人に危害を加えられる可能性が高く、人の影響の少ない時間帯に集中して栽培物採食を行っているためと考えられる。
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© 2004 日本霊長類学会
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