抄録
目的)これまで野生動物の調査研究で利用されてきた電波発信器はVHF電波発信器が主流であった。しかし、VHF首輪タイプは、我が国特有の複雑な地形によって電波が反射するために、得られた位置の精度が粗い場合もあった。また長期間にわたって継続的に一定間隔の位置情報を得るには、労力やコストの面での負担も大きかった。海外などでは、すでに多くの大型野生動物にGPSを利用した電波発信器が装着され膨大な量の個体の位置情報を収集しGISの技術を用いて生息地利用や移動様式などについて詳細な解析がなされている。ニホンザルでGPS発信器の実用が可能かどうか検討が急務となっている。
方法)長野県望月町および仙台市に生息しているニホンザルにGPS発信器(GPS-POSREC TELVILT製)をそれぞれの地域に1台装着しGPS発信器による個体位置情報の収集を試みた。装着した時期は、冬期(1月から4月)に実施した。GPSの受信間隔の設定は3.2ケ月間、毎日3時間間隔で10時00分、13時00分、16時00分、19時00分の時間に個体の位置情報を採取するように設定した。
結果)長野県望月町で装着した個体のデータは、202点、仙台市で装着した個体は273点で個体の位置情報を得ることができた。キャッチできた衛星4基以上(3D以上)のデータは、長野県望月町で28.1%、仙台で41.3%であった。
考察)仙台で、位置情報の収集が多い理由として、個体が利用していた場所が河川と農耕地の広がる比較的障害物の少ない見通しのよい場所であったこと、データを収集した期間が冬期であったため、ほとんどで落葉していたことなどから上空の衛星がキャッチし易かったことなどが考えられた。