抄録
(目的) 胎盤性生殖腺刺激ホルモン(CG)は、妊娠中の胎盤から母体血中に放出される。CGはα 、β 2種類のサブユニットからなる糖蛋白ホルモンで、下垂体で合成される他の生殖腺刺激ホルモンとも共通した構造を持っている。αサブユニットが動物種に固有性が高いといわれるのに対して、βサブユニットはホルモン種に特異的で動物種を問わずおおむね共通であるとされている。ヒトCG-β サブユニット(&beta-hCG)測定キットにより、カニクイザルのβ -mCGの測定が可能であるかについての検討、およびβ -mCGの検出によるカニクイザルの妊娠診断についての検討を行った。
(方法) 妊娠および非妊娠状態にあるカニクイザルの血清をヒト用キットに適用し、キット添付標準標品との平行性検定等、測定の信頼性試験を行った。また交配から5週目に行われる超音波妊娠診断による妊娠確定診断までの間に採血を行い母体血中β -mCGを測定した。
(結果) 平行性検定の結果では、測定値の用量依存性並びに曲線平行が確認された。添加回収試験では、回収率92.1±4.4、変動係数4.7%であった。日内変動、日間変動は、高用量、中用量ならびに低用量ともに変動係数は10%以内であった。カニクイザル95頭を対象として交配を行い、交配後1週間隔で採血を行いβ -mCGを測定した。後になって妊娠していないことが確定した個体では、すべての測定で測定下限(2mIU/mL)以下であり、後に超音波による診断により妊娠が確定された個体については、交配後3週目~4週目頃に明らかに高値を呈した。
(考察) ヒト用測定キットによるカニクイザルのβ -mCGの定量的測定は充分に可能であり、得られた測定値も充分に信頼されることが実証された。交配後21日目前後の母体血清中β -mCGを測定することにより、妊娠の確定診断を行うことができ、これまで交配後5週目に行われていた超音波による妊娠診断を約2週間早めることができた。