抄録
最近、胎内発達の重要な時期ばににおける内分泌撹乱物質への低用量曝露が、 胎児の発達と成人してからの結果に深刻で永久的な影響を与えることがあるという見解が集中している。そこでカニクイザルを用いて、胎児期にビスフェノールAを曝露した結果、社会・仲間関係に影響が見られるのかをサルの行動観察から明らかにする。そして脳内の行動調節系の感受性に影響を及ぼしている のかを検討していく。
【方法】 被験体はカニクイザル(Macaca fascicularis)で、control群15個体、BPA群10個体。ビスフェノールA 10μg/kg/dayを母ザルに妊娠20日から出産まで皮下投与し た。出会わせ試験は生後1年と生後2年の時に行われた。実験は観察用ケージで 行い、出会わせは各群内の同性同士を2頭で行った。個体識別法により5秒に 1回の1/0サンプリングで解析した。解析ソフトはNoldus社のThe Observer 5.0を使用した。
【結果と考察】 社会的接触行動はcontrol群に多く見られていたが、発達と共に慣れが生じ減 少する傾向であった。control群のオスは、他個体と触れ合うことを嫌がら ず、他個体との距離も近い。それに対してBPA群オスは、メスの行動と差がな く、他個体との距離もcontrol群オスに比べると遠かった。正準判別分析で は、(a) control群メス、(b) control群オス、(c) BPA群オスとメスの3つに分類 出来た。control群オスの重心は他の群と距離が離れていた。今回、低用量の ビスフェノールA投与によりオスの行動がメス化、あるいはオスの性差を減少 させていることが明らかになった。胎児期における低用量のビスフェノール Aはエストロゲン作用を持っていると考えられる。このことからビスフェノー ルAは、胎児期に脳の性分化を障害する可能性があり、性的二型核に影響を与 えていることが示唆された。