霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: A-10
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口頭発表
個別ケージ飼育ニホンザルにおける動画の選好性
*小倉 匡俊上野 吉一
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抄録
実験動物の飼育形態として一般的な個別ケージでの飼育では、感覚環境や社会環境の厳しい制限を受ける。これらの環境への要求を満たすようなエンリッチメントを個別ケージ飼育のサルに対して施すことは、動物福祉の観点から重要な意義を持つ。昨年度大会では個別ケージ飼育ニホンザルを対象に、感覚性強化のパラダイムにより動画を強化刺激として反応が形成されることを報告した。本研究では動画の種類による選択率の違いを調べ、ニホンザルの持つ環境に対する要求を明らかにすることを目的とした。対象としたのは人工哺育経験のある個別ケージ飼育ニホンザル1個体で、動画の種類として6種のカテゴリー(ニホンザル・アカゲザル・チンパンジー・ヒト・アニメーション・風景)を用いた。ケージに設置したタッチパネル上に動画の内容に対応した6つの選択キーを提示し、選択キーに触れると3秒間動画が提示された。3秒以上画面に手を触れなければ、選択画面に戻った。食物報酬は使用しなかった。全40セッションの実験をおこない、各カテゴリーに対する選択反応と再生時間を記録した。20セッション経過時点で全ての刺激を新しいものに入れ替えた。最初の10セッションではヒトとアニメーションの動画に高い選択率を示した。続く10セッションではアニメーションの選択率が減少し、ヒトの動画の選択率は高いままであった。刺激を入れ替えると、全体の再生時間が増加した。とくにヒトの動画に対する選択率が高まった。この結果は、被験体のヒトの動画に対する選好性を示唆している。人工哺育や日常的にヒトと接している経験の影響が示唆された。ヒトの動画では、既知のヒトが見知らぬ衣服を着ている動画や未知のヒトの動画をより高い割合で選択した。本研究は1個体のみの結果であるため、個体差の影響を否定できない。今後は被験体の数を増やして結果の検証をおこないたい。
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© 2007 日本霊長類学会
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