霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: P-13
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ポスター発表
チンパンジー幼児における活動空間の発達
*福永 恭啓黒田 末壽
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抄録
(目的)チンパンジーのコドモは1歳半ごろから母親から離れて自立した活動を始め、独自の活動空間を獲得していく。人間の活動空間は地面基準の平面的なものに対して、チンパンジーでは樹上を含んだ立体的なものとなる。チンパンジーのコドモの活動空間における発達の広がりを調べる場合、水平・垂直方向の広がりを考慮する必要があるが、多くの研究では水平方向のデータしか扱われていない。本研究では、飼育下のチンパンジーのコドモを対象に、母親の位置を基準とし、水平・垂直両方向の立体的な活動空間の広がりの発達を明らかにしたい。
(方法)大阪市天王寺動物園で母子(子:レモン♀2003年10月生まれ)1組を含むチンパンジー7個体を対象に06年2月~現在継続中。1週間に2日、1日6時間、全個体の近接個体・利用空間・行動を5分間隔で記録した。母子に関しては母子間距離を放飼場の設計図(平面図・断面図)を用いて記録した。
(結果)レモンは2歳3ヶ月の時点で母親の上部空間を有意に多く利用し、その後、下部の使用頻度が増え2歳10ヶ月以降は差がなくなった。また、母子が10cm以上分離した頻度を水平空間と垂直空間で比較した場合、全期間で水平へ離れる頻度が垂直へ離れる頻度を上回った。
(考察)母親を基準としたレモンの空間利用頻度が上部空間と下部空間で異なったことから、コドモが母親より上部に行くことを選ばせた何らかの判断要因の存在が示唆された。また、母親を基準としたレモンの水平と垂直の空間利用率にも有意な差があり、コドモは母親からの分離において母親と同じ水平空間を垂直空間より好むことが示唆された。以上より、コドモは母親から離れるとき、母親を基準に、まず水平空間、つぎに上方空間を選好することが示唆される。天王寺と異なった放飼場で見られる結果との比較、母親以外の他者との位置関係などの比較を通して、今後は上記の仮説の妥当性とその決定因を検討したい。
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© 2007 日本霊長類学会
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