霊長類研究 Supplement
第23回日本霊長類学会大会
セッションID: P-17
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ポスター発表
テナガザルの技術的知性と社会的知性
*井上 陽一井上 悦子板倉 昭二竹下 秀子
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抄録
テナガザルは系統的には大型類人猿とマカクの中間に位置する。その認知機能を明らかにすることは、知性の進化を考える上できわめて重要である。しかし、実証的研究はこれまでほとんどおこなわれてこなかった。そこで、1999年以来、発表者らは動物園で飼育されているシロテテナガザル(Hylobates lar)3個体を対象とし、技術的知性や社会的知性に関するさまざまな認知実験をおこなってきた。本発表では、2歳9ヶ月~7歳8ヶ月齢の雌2個体と、18歳3ヶ月~18歳7ヶ月齢の雄1個体の結果を報告し、テナガザルの認知特性について考察する。まず、技術的知性については、物の慣用的操作や、物を水の中に落として拾い上げその水を舐めるといった道具使用がまれに観察された。しかし、ヒト幼児や大型類人猿のような遊離物同士を関係づける定位操作や道具使用はほとんど観察されなかった。次に、社会的知性については、特に「視線追従」、「見ることと知ることの関係」や「抑制」に係わる実験において以下のような肯定的な結果が得られた。1)相手の指さしや視線、そして見ることと知ることの関係を理解して自分の行動を決定することができる。2)食べ物が一つしかない時、大人雄は取りに行かず、若雌が取るのを許すことができたりする。本研究の対象個体は、動物園でヒトと触れ合いながら育った。このような特殊性はあるにしても、テナガザルにも道具使用が可能であり、高い社会性を持つ可能性のあることが明らかになった。
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© 2007 日本霊長類学会
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