霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: A-2-3
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口頭発表
行為における自己の認識―チンパンジーにおけるセルフエージェンシーの知覚
*兼子 峰明友永 雅己
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抄録
本研究ではトラックボールを入力装置として用いて,チンパンジーにおいてセルフエージェンシーの知覚が成立するのかを検討した。セルフエージェンシーの知覚とは,環境中に観察された変化のうち,自己に由来するものと,その他の要因により生じた事象を区別する認知機能である。チンパンジーは鏡に写った自分の姿を自分の像だと認識できるということが報告されている。一方で,鏡に向かい腕を繰り返し上下に振るといった身体と鏡像の動きの同期を確かめるような行動を行うことが知られている。チンパンジーは,鏡に写った“自分の姿”が初めからわかったのではなく,鏡に写った像の“動き”が自己に起因するものだとわかったのではないだろうか。そこで本研究では,トラックボールとモニタを用いて被験個体の外見が関与しない状態で,行為における自己の認識に焦点を当てた。テストでは画面に2つのカーソルが表示された。ひとつはチンパンジーが操作した,もう一方はコンピューターによって制御された。チンパンジーは,2-5秒間の操作場面の後に,タッチパネル上で「自分の操作していたカーソル」を触れれば報酬を得た。コンピューター側が動かしていたカーソルに触れると不正解となった。実験に参加した4個体のうち3個体のチンパンジーは自分が操作していたカーソルを正しく選択することができた。また現在までに2個体のチンパンジーにおいて,カーソルの運動パターンの違いなどにもとづく視覚手がかりのみよる弁別ではなく,自己の運動とカーソルの動きとの照合にもとづく反応であることが確認された。今後残りの個体についても検討していく必要はあるが,以上の結果はチンパンジーにおいてセルフエージェンシーの知覚が成立することを示唆する。
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© 2009 日本霊長類学会
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