抄録
チンパンジーとヒトの幼児を対象として,対面場面で物を使った課題を実施して直接種間比較をおこなっている。今までにおこなってきた課題から,時期的にはヒトに遅れるものの,チンパンジーも積木をつむようになることがわかっている。
さらに,形を変えてわざとつみにくくした積木をつむという行動が,ヒトでもチンパンジーでも同じように獲得されることが明らかになった。一方で,他者が作った積木の塔をモデルとして参照し,同じ色の順番となるようにつむ課題では,その獲得がチンパンジーには困難だった。
物の操作をおこなうときに,物理的・普遍的なルールを使う場合と,社会的・恣意的なルールに従う場合とで両種の差がみられたといえる。その中間的な性質を持つものとして,内的にルールを生成して物を扱うことがあるのかを調べる新たな課題場面を設定して検証した。
先行研究では,二つの皿への物の入れわけ行動から,ヒトとチンパンジーのカテゴリー分類やその発達が調べられた。本研究では,形や色が異なる積木を,9個の升目のついた容器へ自由に入れていくという課題を設定した。色や形の違いをもとに,平面上にわけて配列するというようなルールを自発的に作って,積木を配置することがあるのかどうかを調べた。
ヒト幼児では,ばらばらに入れる,各列が均等になるように配分する,カテゴリーの違いによって列をわけて配置するなどの行動がみられた。また色と形の両方の次元を同時に考慮しなくてはいけない条件では,自発的なルールが乱れることもあった。チンパンジーでも,提示条件によっては,カテゴリーの違いによって配列して入れることがあった。
物を扱うという文脈であらわれる,チンパンジーとヒトの認知的特性の相違点について比較認知発達の視点から考察をおこなう。