霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-12
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ポスター発表
西部タンザニア地域のチンパンジーの遺伝的多様性
*田代 靖子井上 英治小川 秀司井上-村山 美穂西田 利貞竹中 修
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抄録
西部タンザニアは,チンパンジー(Pan troglodytes)の分布の東限にあたる地域である。ゴンベやマハレといったチンパンジーの長期調査地がある一方で,周辺のチンパンジー密度の低い地域についての情報が不足しており,同地域のチンパンジーがどのようにして分布を拡大してきたのかを示す資料はほとんどない。本研究は,西部タンザニアの複数の個体群から収集したDNA試料を用いて,同地域のチンパンジーの遺伝的多様性を解明することを目的としておこなった。
分析には,ゴンベ,ウガラ,マハレ,ルワジなど西部タンザニアのチンパンジー生息地各所(北より順に表記)から非侵襲的に収集した糞や尿,ワッジなどから抽出したDNA試料を用いた。ミトコンドリアDNAの331塩基の配列を決定し,文献から得た他地域のデータと合わせて遺伝的分化や多様性の指数の解析をおこなった。
その結果,1)ウガラ・マハレ地域と(その北のウガンダに近い)ゴンベの間で遺伝的に分化していること,2)近年になって発見された南限生息地のルワジは,ウガラ・マハレ地域と遺伝的分化が認められないこと,3)ウガラ・マハレ地域のチンパンジーは,ウガンダやゴンベのチンパンジーに比べて遺伝的多様性が低いことが明らかになった。
遺伝的分化が認められたことと遺伝的多様性が低いことから,ウガンダやゴンベから南東に移動した比較的少数の個体が現在のウガラ・マハレ地域に分布を拡大してきたと考えられる。また,ゴンベとウガラ・マハレ地域は現在では人間活動によって生息域が分断されているが,遺伝的分化の程度から考えると,チンパンジーが生息しにくい地形や植生が地理的障壁となり,両地域間のチンパンジーの遺伝的交流は長期にわたって途絶えていた可能性も考えられる。
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© 2009 日本霊長類学会
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