霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-31
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ポスター発表
ニホンザルの食物パッチ利用における見回しコスト~群れサイズによる違い~
*風張 喜子揚妻 直樹
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抄録
ニホンザルは食物パッチ内で,他個体の位置把握のための見回しをする。この見回しは伴食個体が少ないほど増加し,それに伴って採食速度が低下することが明らかになっており,採食時の重要なコストになると言える。群れサイズが異なれば,同じ伴食個体数でも群れ全体に対する割合が異なるので,見回しの必要性が変化し,コストも異なると予測される。本研究では採食行動における最適な群れサイズや伴食個体数を検討するために,群れサイズによる見回しコストの変化を明らかにすることを目的とした。
2008年10月に宮城県金華山島に生息する大きさが異なる2群(B1群: 34頭,B2群: 17頭)を対象として調査を行った。見回しが採食時のコストになっていることを確認するために,B1群の高順位メスについて食物パッチ利用中の採食速度(1分あたりの採食個数)と見回しの頻度を観察した。
また,群れサイズによって伴食個体数と見回しコストの関係が異なるかどうかを検討するために,それぞれの群れでパッチ利用中のオトナメスについて見回し頻度(1分あたりの見回し回数)と伴食個体数を観察した。
B1群の高順位メスの観察より,見回し頻度が低いほど採食速度が高く,見回しが採食時のコストになっていることを確認できた。見回し頻度は伴食個体数が多いほど,また,同じ伴食個体数では群れサイズの小さいB2群で低かった。平均の見回し頻度も,群れサイズが小さいB2群でより低かった。群れによる見回し頻度の違いは,群れサイズだけではなく移動距離の違いの影響を受けている可能性もある。
見回しの必要性は,移動距離が長ければ増加し,移動距離が短ければ低下すると予測される。しかし,1日の移動距離はB2群のほうが大きかった。以上より,群れによる見回し頻度の違いは群れサイズの違いによると考えられ,見回しコストは,小さな群れでは小さく,大きな群れでは大きくなると言える。
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© 2009 日本霊長類学会
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