霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-38
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ポスター発表
東山動物園における新たな活動の紹介:研究とアウトリーチングの融合
*足立 幾磨廣澤 麻里鈴木 直美
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抄録
2008年6月18日,京都大学と名古屋市との連携に関する協定調印式が名古屋市東山動物園において行われた。この協定は,野生動物の保全と共生,並びに動物福祉に関する教育・研究を推進することを目的としたものである。その協定のもと,発表者らは東山動物園に住む5人のチンパンジーを対象に,研究とアウトリーチング活動を行っている。まず,チンパンジーのより自然な行動を展示するために導入された高さ11 mのタワーについて,その利用状況を調査・分析した。さらに,屋外放飼場脇に新設された2 m四方のガラス張りの実験ブースを用いて,道具使用行動の展示,さらにはタッチパネルを用いた認知実験の実施およびその展示を行っている。この目的は,認知実験によって引き出される知性,およびその学習行程そのものを観客に展示することである。こういった活動を通して,発表者たちは,観客・動物園・研究者の3者の間でWin-Winの関係を構築することを目指している。つまり,観客は,厚さ4 cmのガラス越しに,チンパンジーの道具使用・認知実験,さらにはそれらによって浮き彫りにされる個体間の社会関係を,間近に観察することができ,チンパンジーについての知識を深めることができる。動物園としては,動物を見せるだけではなく,より深く動物についての情報を発信し,環境教育へとつなげることが可能となる。これにより,動物園は「人と自然をつなぐ場」としての役割をいっそう果たすことが可能となる。研究者には,こういった一連の連携により,多くの野生動物を対象とする研究が行いやすくなる,また,アウトリーチング活動を行う良い機会を得る,といった利点がある。本発表では,この動物園での新しい取り組みの様子を紹介するとともに,そこで行われる研究,および今後の方向性について議論する。
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© 2009 日本霊長類学会
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