霊長類研究 Supplement
第25回日本霊長類学会大会
セッションID: P-39
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ポスター発表
大型類人猿の屋外放飼場に設置された構築物
*落合-大平 知美松沢 哲郎
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抄録
大型類人猿情報ネットワーク(GAIN)では,研究者と飼育施設とのネットワーク作りや,大型類人猿に関する情報整備に取り組んできた。そうした活動の基盤として,国内で大型類人猿を飼育している施設1つ1つを訪問し,日本国内で大型類人猿を飼育する全58施設の実地調査をおこなった。訪問期間は2002年1月から2008年3月である。飼育個体や飼育環境などの調査をもとに,本発表では,屋外放飼場の構築物に注目し,その建築時期や形態についてまとめた。58施設中,チンパンジー(Pan troglodytes)を飼育する施設は54か所,ニシゴリラ(Gorilla gorilla)が10か所,ボルネオオランウータン(Pongo pygmaeus)とスマトラオランウータン(Pongo abelii)およびその種間雑種を飼育する施設が23か所だった。チンパンジーでは,全施設の約4分の1にあたる15か所が,高さ7 m以上の構築物を設置していた。また,2000年度以降に新築した施設すべてに,構築物が導入されていた。オランウータンでは,2001年以降に新築・改修をおこなった3か所の施設が,高さ10 m以上の構築物を設置していた。構築物の形に注目すると,チンパンジーの構築物は,放飼場内に複雑に組み立てられロープなどを組み合わせてすそ広がりだった。オランウータンの構築物は,高い位置までまっすぐ伸び,そこからワイヤーや鉄骨などでタワーどうしをつなぎ,その一部は人用通路の上を通るものだった。ゴリラでは,屋外放飼場に丸太を追加するなどの環境エンリッチメントはおこなわれていたが,チンパンジーやオランウータンのように高さのある大掛かりな構築物はなかった。今回の調査により,チンパンジーとオランウータンの屋外放飼場に構築物を導入する傾向が確認され,その形態は種により異なることが明らかになった。構築物導入は樹上行動を満たすのに有効だと思われるが,これらの構築物がどのように利用されているかについては,今後,観察などによる評価をおこなう必要がある。
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© 2009 日本霊長類学会
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