霊長類研究 Supplement
第27回日本霊長類学会大会
セッションID: P-28
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ポスター発表
ニホンザルにおける顔全体処理の発達
*足立 幾磨友永 雅己松沢 哲郎
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抄録
 顔はヒトにとって相手の識別、他者の視線・意図等の認識を支える重要な社会的刺激である。ヒトは顔に対し、その目鼻口の相対的な位置関係に鋭い感受性を持つ。このヒトの顔知覚様式の進化を考えるうえで、ヒトとヒト以外の霊長類種における顔知覚様式の異同を検討することは不可欠である。ヒト以外の霊長類の顔知覚様式は、これまで倒立効果に焦点を当てて調べられてきた。しかし、これらの研究においては、内部特徴を直接的に操作した刺激を用いていないため、顔の倒立呈示により目鼻口の2次的関係特性の処理が阻害されていたのかはわからないという問題点があった。こうした背景を踏まえ、発表者らは直接的に2次的関係特性を操作したサッチャー錯視に注目し、アカゲザルの知覚様式を分析した。その結果、アカゲザルが同種顔に対しサッチャー錯視を知覚することをあきらかにした(Adachi et al. 2009)。さらに、Dahl et al.(2010)は、ヒトとアカゲザルが同種の顔に対してのみサッチャー錯視を知覚することを報告している。本研究では、こうした知覚様式の発達的側面を明らかにするため、生後2カ月から4カ月のニホンザルの乳児を対象に、同種および他種(ヒト)の顔におけるサッチャー錯視の知覚を分析した。方法には、馴化脱馴化法をもちい、刺激には同種・ヒトの正面顔写真および、それをサッチャー顔化した写真をもちいた。まず、馴化段階では、どちらか一方の種の顔写真を呈示した。続くテスト段階では、馴化にもちいた写真と、それをサッチャー顔化した写真を交互に呈示した。その際、馴化・テスト両段階において正立顔をもちいる正立条件と、倒立顔をもちいる倒立条件を設けた。実験の結果、2から4ヶ月の乳児は、興味深いことに同種・ヒト両種の正立顔に対しサッチャー錯視を知覚することが分かった。Dahl et al.(2010)および本研究結果をあわせ考えると、発達初期段階には異種顔に対しても全体処理が適用されるが、成体においては同種顔に対してのみ全体処理が適応されるように知覚的狭小化が生じると考えられる。このような発達様式はヒトの顔知覚様式ともよく似通っており、ヒトの顔知覚様式の起源がマカクザルにまでさかのぼれる可能性を示唆している。
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© 2011 日本霊長類学会
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