抄録
「動物は,夜,何をしているだろう?」そんな興味を抱く人は多いだろう。たとえば昼行性霊長類を夜明けから日没まで調査している研究者の中には,調査を終えたあと真夜中に彼らの声や活動音を聞いた経験を持つ者も多いと思う。また動物園の飼育員は日中の業務を終えた後,動物たちが獣舎でどのように過ごしているか気になっていることだろう。1日の半分は夜である。その夜の動物を観察することで,昼間の動物とはちょっと違った新しい知見が得られるはずである。
本自由集会では,夜の動物の行動研究について大きく2つの点について注目していきたい。ひとつは研究テーマである。夜ならではのテーマとして,まず睡眠が挙げられる。睡眠は哺乳類にとって「脳の脳による脳のための」活動であるとされているが,安らかに眠るために,動物たちはどのような寝相をとり,どれくらい眠っているだろうか? また夜の自然環境下には夜行性の動物や捕食者が活動している。ではそれらの動物に対して昼行性の動物たちはどのような行動をとっているのだろうか? そしてそもそも,夜は眠っているだけで,昼と同じ行動は見られないのだろうか?
議論したいもうひとつの点は観察方法である。夜は暗く,新月の夜などは目の前にある手すら見えない。テーマがあっても観察する手段がなければ研究として成立しないが,夜間観察の方法にはどのようなものがあるだろうか。
本自由集会では,現在おこなわれている飼育下および野生下の動物を対象とした先駆的な研究を紹介し,夜の動物の行動研究の意義やおもしろさについて情報交換をおこなう。
話題提供者
高木直子(京都市動物園)「飼育下のキリン,ゾウ」
西川真理(京都大学人類進化論)「野生下のヤクシマザルとヤクシカ」
持田浩治(琉球大学熱帯生物圏研究センター)「野生下のヤクシマザル」
宝田一輝(京都大学野生動物研究センター)「飼育下のニシゴリラ」
座馬耕一郎(林原類人猿研究センター)「飼育下と野生下のチンパンジー」