霊長類研究 Supplement
第29回日本霊長類学会・日本哺乳類学会2013年度合同大会
セッションID: F3-5
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口頭発表
ニホンジカメス個体の忌避刺激に対する行動
*矢部 恒晶
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抄録
 ニホンジカの捕獲を行う場合,捕獲による攪乱や捕獲の失敗により,逃走した個体や周囲の個体が警戒心を増加させ,時間とともに捕獲効率が低下することが問題点として挙げられている.一方でシカは捕獲や防除資材の刺激などに対して一時的に警戒することがあっても,その後馴化する場合があることも知られている.このような忌避刺激に対するシカの行動特性の把握は捕獲の効率化に資するであろう.そこで捕獲対象として優先されるメス個体について,忌避刺激に対する行動の実証的な事例を得るため,霧島山地のえびの高原においてメス成獣個体 3頭に GPSを装着し,約 1か月の追跡により行動圏を把握した.その後,それぞれの GPS装着個体が安静にしている場所に近づき,忌避刺激としておよそ 25~ 30mの距離からシカに向かって麻酔銃により空の投薬器を射出し,同時に爆竹による音の発生を 1回行い,刺激の前後 2時間の位置を 10分間隔,前後 1週間の行動を 4時間間隔で記録した.その結果,刺激を与えた時に 3頭とも逃走したが,その範囲は通常の行動圏内に留まり,同日中に刺激を与えた地点の近くに戻る場合もあった.さらに GPS装着個体のうち 1頭は,後日行動圏の辺縁部に設置されていた地元の試験捕獲事業用の箱ワナにかかり,人の手によって保定された後に放獣されたが,その後の追跡期間中に行動圏を大きく変えることはなかったものの,箱ワナ設置点に近づくことはなかった.これらのメス個体では,今回の実験による刺激は行動への影響が少ない軽微なものと考えられた.また箱ワナで捕獲されたときの刺激は,投薬器や音による刺激よりも強いものであったと考えられるが,行動圏が変わることはなかったため,このような定住性の高い個体の捕獲については,捕獲の間隔などの考慮による馴化,行動圏内の別の場所や他の方法で捕獲するなどの対応が考えられた.
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© 2013 日本霊長類学会
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