霊長類研究 Supplement
第30回日本霊長類学会大会
セッションID: B10
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口頭発表
非侵襲糞サンプリングに基づくギニア・ボッソウの野生チンパンジーの全遺伝子配列解析
*早川 卓志*岸田 拓士*郷 康広*川口 恵里*会津 智幸*石崎 比奈子*豊田 敦*藤山 秋佐夫*松沢 哲郎*阿形 清和
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抄録
野生動物のDNA配列解析は、血縁構造、集団多様性、系統地理、行動多型など、動物生態の遺伝的背景の理解の助けとなる。一方で、野生動物から非侵襲的に収集可能な糞や尿などは、DNA分析試料として質が悪く、広範なDNA分析を制限してきた。本研究では、超並列シークエンシング及びターゲットキャプチャーという次世代のDNA分析技術を利用してこの問題を解決し、糞DNAから野生チンパンジーの全遺伝子配列を解析することに成功した。
2012年12月から翌年1月にかけて、ギニア・ボッソウの人づけされた野生ニシチンパンジーの単位集団(12個体)から28個の糞を収集し、lysis bufferに常温保存して、DNAを抽出した。糞DNAはホストのチンパンジーゲノムDNAだけでなく、腸内細菌や食物のDNAも含むが、今回のサンプルのホストDNA割合は平均3.9%、中央値2.3%であった。そのうち、ホストDNAが4.0%であったジレ(推定55歳のメス)の糞DNA 1µgを解析に用いた。
霊長類のゲノムDNAのうちタンパク質を指定する配列(エクソン)は約1.5%である。ターゲットキャプチャーによりヒトのエクソンを濃縮する試薬を、ヒトとチンパンジーゲノムの類似性を利用して、ジレの糞DNAに適用した。濃縮後、次世代シークエンサーMiSeqを用いて、ジレゲノムの各エクソン配列を約40回の厚みで決定した。塩基あたりのヘテロ接合度は0.061%であった。
同様に次世代シークエンサーHiSeqで決定された、霊長類研究所の野生由来ニシチンパンジー3個体のエクソン配列のヘテロ接合度は0.057-0.059%であったため、ジレは一般的なニシチンパンジーの遺伝的多様性を持つと考えられた。本研究は、ボッソウのチンパンジーの遺伝子多型や集団多様性に関する網羅的な基礎データを提供するとともに、個体ベースの分子生態学研究の新しい方法論を示す。
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© 2014 日本霊長類学会
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