霊長類研究 Supplement
第37回日本霊長類学会大会
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ポスター発表
カニクイザルを用いたプリオン病モデルの構築
柴田 宏昭小野 文子村山 裕一岡本 実萩原 克郎保富 康宏
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p. 50

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抄録

プリオン病は進行性の脳神経細胞変性を起こす一群のまれな致死性疾患で、代表的な疾患としては人のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)や牛海綿状脳症(狂牛病、BSE)がある。BSEは人に伝達することが分かっている(変異型CJD)。この疾患の原因は細胞内の異常なプリオンタンパク(PrPSc)の蓄積によるものと考えられているが、どのような機序で発症するのか詳しく分かっていない。現在のところ有効な治療法もない。発症機序の解明や治療法の開発には動物モデルが必要であり、齧歯類等を用いたプリオン病モデルは作出されているが、これらのモデルでは人と同様な高次脳機能障害を再現することは難しい。従って、人に近い霊長類を用いたプリオン病モデルは必要とされる。BSEを発症したウシの脳乳剤を霊長類に接種し、人と同様の症状を呈することは既に報告されている。しかしながら、脳内接種し発症するまでに2 年以上、発症期間は1年前後を要する。 また個体による潜伏期間及び発症期間の差が大きい。 そこで、本研究では、より安定的なモデルの構築を目的に、PrPSc 持続発現細胞株を3頭のカニクイザル脳内に接種した。その結果、全頭とも接種1年4,5ヶ月後に神経症状のひとつである驚愕反応等を示し、その後急速に症状が悪化した。安楽死の目安とした神経症状スコアに達したため、接種1年7ヶ月後に全頭、安楽死を行った。安楽死直後のMRI撮像により、プリオン病に見られる脳の萎縮、顕著な脳室拡張が認められた。また病理検索やウエスタンブロッティングにより脳内のPrPSc蓄積も確認した。PrPSc細胞株を用いることにより、従来モデルに比べ、潜伏期間や症状の進行が早く、且つ個体による発症経過の差が少ない安定したモデルが構築できた。実験期間の短縮は感染ザルの負担軽減にも寄与する。今後はこのモデルを利用して、プリオン病の発症機序の解明や治療法の開発等を試みる。

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© 2021 日本霊長類学会
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