2013 年 20 巻 1 号 p. 57-62
[目的]職場訪問により現状認識が促され,退所後の生活に影響を与えた一症例を通して,職場訪問の有用性と職場訪問における理学療法士の役割について考察する。[方法]復職は困難と判断されたが,本人,家族の受け入れが困難であった症例に対して,現状認識の促しを図るために職場訪問を実施した。[結果]訪問時は訓練場面と比較すると動作の安定がみられたが,全ての過程において自立には至らなかった。理学療法士と雇用側との調整において,常勤としての復職は困難ではあるが,生き甲斐としての仕事への繋がりをもつことができた。雇用側から説明が行われ,本人,家族は復職困難を理解した。[結論]職場訪問の有用性として,実際の場面に応じた動作能力の確認,本人および家族への現状認識の促し,雇用側への理解の促しなどがある。職場訪問を通して理学療法士がその専門性を活かし,身体機能,移動能力を的確に評価し,復職を考慮して雇用側や多職種と連携することで,社会復帰に向けた支援の一端を担うことができる。