抄録
【目的】末梢動脈疾患は,糖尿病や高脂血症,喫煙等による動脈硬化危険因子により動脈の狭窄や閉塞を起こす疾患であり,酸化ストレスの上昇と血管内皮機能との関連が報告されている。マウス下肢虚血モデルは,作製方法が確立しており,末梢動脈疾患モデルとして研究されている。C57BL/6NCrマウス(野生マウス)は,生体内でビタミンCを合成できるが,SMP30/GNLマウス(VCマウス)はヒトと同様,ビタミンCを合成できない。今回は,異なる系統の下肢虚血が,酸化ストレス防御系に及ぼす影響を明らかにすることとした。【方法】対象は,野生マウス18匹,VCマウス15匹とし,右大腿動脈の結紮による下肢虚血群と,動脈露呈のみのsham群に分類した。外科的処置前後に皮膚温度,酸化ストレス度(d-ROM test値)と抗酸化力(BAP test値)を測定した。【結果】VCマウスは,外科的処置によりd-ROM test値の上昇,BAP test値と潜在的抗酸化力の低下を認めた。【結論】下肢虚血にビタミンC摂取量の低下が加わると,酸化ストレス度が影響を受け,潜在的抗酸化力の低下を生じることが示唆された。