2021 年 59 巻 1 号 p. 57-68
本研究は,初任保育者の子ども理解のゆきづまりの構造を解明するため,初任保育者3名へ半構造化インタビューを行い,テーマ分析と発生の三層モデルを踏まえた複線径路・等至性モデルでゆきづまり場面を分析した。その結果,①表面的理解・判断,②本児理解の未的確さ,③個と集団のバランスに基づくゆきづまりが見出された。また,本児のポジティブな見とりでもゆきづまりが生じやすいこと,二者関係内要因,初任期特有要因,他児・集団要因,個人内要因など多様な要因が影響を及ぼすことが明らかになった。これらのゆきづまりは,単に子ども理解を停滞させるものでなく,“わかり合おうとする志向性”が潜在するからこそ生じた事象であることが示唆された。