運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
原著
年齢,実施頻度,種目別にみた青・壮年期のスポーツ実施の現状および推移:15年間の社会生活基本調査を用いた記述疫学研究
柴田 陽介 早坂 信哉野田 龍也村田 千代栄尾島 俊之
著者情報
ジャーナル フリー

2011 年 13 巻 1 号 p. 51-60

詳細
抄録

目的:身体活動は各種疾患の予防のために注目されている。身体活動に関する調査は多いが,ウォーキング以外のスポーツやその実施頻度を考慮した報告は少ない。そこで本研究はスポーツ種目・実施頻度を考慮した横断的および縦断的なスポーツの実施状況を明らかにすることを目的とした。

方法:分析対象は1991年,1996年,2001年,2006年社会生活基本調査とした。社会生活基本調査は総務省が国民の生活の実態を明らかにするために5年ごとに実施している調査である。層化二段抽出法により,1991年は15歳以上の約25万人,1996年は10歳以上の約26万人,2001年は10歳以上の約19万人,2006年は10歳以上の約18万人に調査を行っている。青・壮年期を対象にするため,20~59歳を分析対象とした。1)現在のスポーツの実施状況を明らかにするために,2006年社会生活基本調査の「スポーツ活動」項目の分析を行った。「スポーツ活動」はスポーツ21種目について,この1年間の実施の有無と実施頻度を答えるものである。週に1回未満の実施を低頻度,週に1回以上の実施を高頻度と定義し,年齢階級・スポーツ種目別に低頻度実施率と高頻度実施率を算出した。更に直接法による年齢調整をした低頻度実施率と高頻度実施率も算出した。2)縦断的なスポーツの実施状況を明らかにするため,1991年から2006年までの社会生活基本調査の「スポーツ活動」項目の分析を行った。直接法による年齢調整を行い,年齢調整した低頻度実施率と高頻度実施率を算出した。更に長期間のスポーツの実施状況の推移を比較するために,現在(2006年)と1991年の年齢調整した低頻度実施率比と年齢調整した高頻度実施率比(2006年の年齢調整した低頻度または高頻度実施率/1991年の年齢調整した低頻度または高頻度実施率)を算出した。なお,縦断的検討では各年に共通して調査された項目のみを検討対象としたため「ウォーキング・軽い体操」を含む9種目が解析から除外された。

結果:1)年齢調整した高頻度実施率が最も高いスポーツ種目は,男女ともにウォーキング・軽い体操であった(男性:13.2%,女性:20.8%)。器具を使ったトレーニング,サイクリングの高頻度実施率も高かった。年齢調整した低頻度実施率が最も高いスポーツ種目は,男女ともにボウリングであった(男性:25.2%,女性:22.0%)。水泳,ウォーキング・軽い体操の低頻度実施率も高かった。2)縦断的にみると,年齢調整した高頻度実施率は,いずれの年も男女ともにジョギング・マラソンが高かった(男性3.4~4.1%,女性1.4~1.8%)。男性ではゴルフ,つり,女性ではバレーボール,水泳の年齢調整した高頻度実施率も高かった。年齢調整した低頻度実施率は,いずれの年も男女ともにボウリングが最も高く(男性25.2~38.5%,女性22.0~30.0%),つり,水泳も高かった。年齢調整した低頻度実施率比はすべてのスポーツで1,00以下であったが,年齢調整した高頻度実施率比は男性のバレーボール(1.12),水泳(1.05),ジョギング・マラソン(1.04),女性の野球(1.40),ボウリング(1.26)で1.00以上となった。

結論:1)横断的な分析から,高頻度で最も実施されているスポーツはウォーキング・軽い体操であり,他の20種目のスポーツと比べても実施している者が非常に多かった。低頻度で最も実施されているスポーツはボウリングであったが,他の20種類のスポーツもよく行われていた。 2)縦断的な分析に「ウォーキング・軽い体操」を加えることができなかったが,それ以外のスポーツは実施する者が減少している傾向がみられた。高頻度で実施する者は低頻度で実施する者より減少幅が小さかった。

著者関連情報
© 2011 日本運動疫学会
前の記事 次の記事
feedback
Top