運動疫学研究
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運動疫学分野における「筋力向上活動」という用語の提案
原田 和弘 柴田 愛岡 浩一朗中村 好男
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2011 年 13 巻 2 号 p. 146-150

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抄録

目的:「健康づくりのための運動指針2006」では,生活活動の一部でも筋力向上が期待できると提案されている。この提案に関する議論を進めていくには,筋力向上に関する行動の概念や用語の整理が求められる。本稿では,米国とカナダの身体活動ガイドラインで記述されている,筋力向上に関する行動を指し示す用語,概念,具体例を紹介したうえで,対応する日本語と,今後期待される研究課題を提案した。

米国の身体活動ガイドラインmuscle-strengthening activityという用語が用いられ,また,「中等度以上の強度または労作を伴うものであり,かつ身体の主要筋群を働かせるものであれば,すべてmuscle-strengthening activityとみなす」と記述されている。具体例として,レジスタンストレーニング,穴掘り,荷物運びなどが挙げられている。

カナダの身体活動ガイドライン:ガイドライン用語集ではmuscle-strengthening activityという用語が採用され,「骨格筋力,筋パワー,筋持久力または筋量を増大させる身体活動であり,運動を含む」と記されている。重りを持ち上げること,きつい庭仕事などが具体例として挙げられている。

結論:「筋力向上活動」という用語を,muscle-strengthening activityの和訳として新たに提案する。筋力向上活動と従来の類似語(筋力トレーニングなど)との最も大きな差異は,生活活動の一部も含んだ概念である点である。今後は,筋力向上活動の実施を効果的に促す方法論の構築に寄与する研究や,筋力向上活動と健康アウトカムとの関連性を検討する研究が行われることが期待される。

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© 2011 日本運動疫学会
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