運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
原著
慢性膝痛を有する中高年女性における運動教室の参加頻度に関連する要因
出口 直樹 井澤 渉太平川 善之檜垣 靖樹
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2018 年 20 巻 2 号 p. 69-79

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抄録

目的:3か月の運動教室の参加頻度が少ない慢性膝痛を有する中高年女性の特徴を明らかにすること。

方法:研究デザインは,探索的研究における前向きコホートとした。対象は,変形性膝関節症(膝OA)と診断された者および膝OAに対する観血的治療を施行した者のうち,3か月以上の膝痛(慢性膝痛)を有する50歳以上の女性92名(年齢72.0±5.9歳)とした。方法は,初回の運動教室の開始前に健康要因,身体的および心理的要因,人口統計学要因を調査した。その後,週1回の運動教室の参加を基準とし,3か月後の運動教室終了時の参加頻度によって12回未満と12回以上の2群に分類した。統計学的分析は,従属変数を参加頻度,説明変数を健康要因,身体的および心理的要因,人口統計学要因,共変量を健康教育の受講の有無とした階層的二項ロジスティック回帰分析にて解析した。

結果:共変量の調整後,体格指数(オッズ比,95%信頼区間=0.75,0.62-0.90)が高いこと,日本版膝OA患者機能評価尺度の膝の痛みやこわばり(1.15,1.02-1.30)が少ないこと,運動自己効力感(1.11,1.00-1.24)が低いこと,疼痛の破局化尺度の反芻(0.84,0.72-0.98)の得点が高いことおよび拡大視(1.46,1.09-1.96)の得点が低いことは,3か月の運動教室の参加頻度の低さと関連していた。

結論:運動教室の参加頻度が少ない慢性膝痛を有する中高年女性は,痛みが少なく,痛みが将来の生活にもたらす不安は少ないが,痛みが頭から離れず,体格指数が高値で,運動を実施する自信がない特徴を有していた。

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© 2018 日本運動疫学会
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