運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
20 巻, 2 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
巻頭言
原著
  • 出口 直樹, 井澤 渉太, 平川 善之, 檜垣 靖樹
    2018 年 20 巻 2 号 p. 69-79
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:3か月の運動教室の参加頻度が少ない慢性膝痛を有する中高年女性の特徴を明らかにすること。

    方法:研究デザインは,探索的研究における前向きコホートとした。対象は,変形性膝関節症(膝OA)と診断された者および膝OAに対する観血的治療を施行した者のうち,3か月以上の膝痛(慢性膝痛)を有する50歳以上の女性92名(年齢72.0±5.9歳)とした。方法は,初回の運動教室の開始前に健康要因,身体的および心理的要因,人口統計学要因を調査した。その後,週1回の運動教室の参加を基準とし,3か月後の運動教室終了時の参加頻度によって12回未満と12回以上の2群に分類した。統計学的分析は,従属変数を参加頻度,説明変数を健康要因,身体的および心理的要因,人口統計学要因,共変量を健康教育の受講の有無とした階層的二項ロジスティック回帰分析にて解析した。

    結果:共変量の調整後,体格指数(オッズ比,95%信頼区間=0.75,0.62-0.90)が高いこと,日本版膝OA患者機能評価尺度の膝の痛みやこわばり(1.15,1.02-1.30)が少ないこと,運動自己効力感(1.11,1.00-1.24)が低いこと,疼痛の破局化尺度の反芻(0.84,0.72-0.98)の得点が高いことおよび拡大視(1.46,1.09-1.96)の得点が低いことは,3か月の運動教室の参加頻度の低さと関連していた。

    結論:運動教室の参加頻度が少ない慢性膝痛を有する中高年女性は,痛みが少なく,痛みが将来の生活にもたらす不安は少ないが,痛みが頭から離れず,体格指数が高値で,運動を実施する自信がない特徴を有していた。

  • 柴田 陽介, 岡田 栄作, 中村 美詠子, 尾島 俊之
    2018 年 20 巻 2 号 p. 80-89
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は未就学時代および学生時代のスポーツ歴と壮年期以降の主観的健康感の関連を明らかにすることを目的とした。

    方法:本研究は横断研究である。解析した「スポーツライフ・データ2012」は,2012年に全国の20歳以上の者からスポーツに関する情報を得た調査である。スポーツ歴は未就学,小学生,中学生,高校生,大学生時代,主観的健康感は現在の健康状態についての回答が得られている。解析対象者は30歳以上の者1,714人とし,各時代のスポーツ歴を説明変数,主観的健康感を目的変数としたロジスティック回帰分析を行い,オッズ比を算出した。その際,年齢,都道府県,body mass index,喫煙,職業,現在のスポーツ実施,世帯年収を調整した。

    結果:解析対象者は男性844人,女性870人,平均年齢は53.7歳(標準偏差:14.2歳)であった。良い主観的健康感に対する未就学時代のスポーツ歴ありのオッズ比は男性1.73(95%信頼区間:0.63-4.75),女性2.07(0.42-10.25)であった。小学生・中学生・高校生時代のスポーツ歴のオッズ比は1.00に近くなり,大学生時代のスポーツ歴のオッズ比は男性1.57(0.98-2.53),女性2.39(1.23-4.64)と再び高くなった。

    結論:大学生時代にスポーツ歴がある壮年期以降の者は,主観的健康感が良いことが明らかになった。

資料
  • 坂手 誠治, 笹田 周作
    2018 年 20 巻 2 号 p. 90-98
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:履き物に着目した女子大学生の活動的なライフスタイル構築に向けた取り組みを行ううえでの基礎資料を得るために,履き物の違いによる歩行意識(抵抗なく歩ける時間)および身体活動量の関連を明らかにする。

    方法:以下の2つの調査を実施した。調査1では,履き物の違いと歩行意識の関連性について質問紙による調査を行った。対象は女子大学生471名(有効回答率73.1%)であった。調査2では,定期的な運動習慣をもたない健康な女子大学生9名(20.8±0.4歳)を対象とした。活動量計を用いて測定した平日の連続した4日間の歩行数および活動強度について,スニーカー条件(Sn条件)とスニーカー以外条件(NSn条件)間で比較した。

    結果:(調査1)歩行意識は,中央値でスニーカー90分,サンダル60分,ヒール30分と有意にスニーカーで長かった。この結果は過去の運動歴や現在の運動習慣などにかかわらず同じであった。(調査2)平均歩行数はSn条件10,969±3,277歩,N-Sn条件9,591±2,212歩であり,両条件間に有意差は認められなかった。活動強度についても3~6メッツ,6メッツ以上,MVPA(moderate to vigorous intensity physical activity)のいずれにおいても有意差は認められなかった。

    結論:女子大学生では,履き物の違いによって歩行意識は有意に異なった。しかし,履き物を変えるだけでは,日常の歩行数や活動強度は変わらないことが示唆された。

実践報告
  • 杉田 勇人, 山北 満哉, 土橋 祥平, 安藤 大輔
    2018 年 20 巻 2 号 p. 99-104
    発行日: 2018/09/30
    公開日: 2019/06/14
    ジャーナル フリー

    目的:LINEと活動量計を用いた生活介入が,日常の歩数に及ぼす影響を検討することを目的とした。

    方法:対象者は健康な大学4年生の男女14名(男性6名,女性8名:22.0±0.1歳)とした。介入に先駆け,対象者の日常における歩数を把握するため,測定値を伏せた活動量計を用いて,歩数の事前測定を1週間実施した。事前測定時の平均歩数,および男女比を考慮し,記録用紙記入群(R群)とLINE報告群(L群)にランダムに割り付けた後,2週間の生活介入を行った。介入期間中は両群ともに毎日定時(AM 10:30)までに前日の歩数と当日の目標を記録させたが,R群は配布された記録用紙に記入し,L群はLINEを用いて報告する形式を用いた。加えてL群の対象者には報告された歩数に対するコメントや結果の開示(L群全体の歩数の推移を表すグラフ,名前を伏せたランキング)などのフィードバックを毎日行った。介入終了後には,両群ともに質問紙を用いて介入内容を評価させた。

    結果:介入期間中の歩数の推移について有意な交互作用は観察されなかったが(群×期間経過,p=0.642),事前測定時から介入2週目にかけて有意に増大することが明らかになった(歩数の変化量,R群:2,900±868歩,L群:1,129±650歩,p=0.036)。

    結論:LINEを用いた歩数の報告は,記録用紙を用いた歩数の記録と同様に歩数を増大させる戦略として有効である可能性が示唆された。

feedback
Top