運動疫学研究
Online ISSN : 2434-2017
Print ISSN : 1347-5827
総説
新型コロナウイルス感染症流行下における身体活動研究の現状:デジタル技術の革新・普及による身体活動研究の方法論的特徴とその知見
天笠 志保 荒神 裕之門間 陽樹鳥取 伸彬井上 茂
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キーワード: SARS-CoV-2, 歩数, 運動, 座位行動
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2021 年 23 巻 1 号 p. 5-14

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抄録

本研究では,感染症の流行時,特にSARS流行時に実施された身体活動研究を振り返ったうえで,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下における身体活動研究の現状を明らかにした。特に,報告されている研究として主である身体活動の記述疫学的研究のレビューを行い,COVID-19の流行が身体活動量に与えた影響を明らかにした。スマートフォンのアプリケーションを用いた国際比較研究によると,COVID-19流行前と比較して,ロックダウンや外出制限下では最も歩数が低下していたが,低下の程度は各国で異なった。我が国では,流行前の2月上旬と比較して,4月の緊急事態宣言下に歩数がおよそ30%減少していた。また,COVID-19流行下で多く実施されたインターネット調査の結果によると,座位行動時間が増加し,中高強度の身体活動時間が減少したことが報告されている。しかし,これらの研究はロックダウンや外出制限下における一時的な状況を示しているに過ぎず,今後,長期的な視点をもって,COVID-19の流行やそれに伴うライフスタイルの変化が日常の身体活動や身体活動の格差に与えた影響を明らかにしていく必要がある。また,インターネット調査やデバイスを用いた身体活動研究が浸透し,今後更なる研究が進むことが期待されるが,対象者の代表性に留意する必要がある。

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