2012 年 5 巻 1 号 p. 21-33
大気環境改善を目指し,2001年に自動車NOx・PM法が施行された.同規制は旧型車両の使用禁止を行うため,利用不可能になった車両が規制対象地域外ヘと流出した可能性がある.そこで,本研究は,規制導入前後で域外の中古車市場価格が低下したかどうかを検証した.分析の結果,規制が域外中古車市場の価格を下落させたことは確認できなかった.一方,海外への中古車輸出は増加傾向にあることがわかった.このことは,国内の環境規制強化が海外の低公害車普及を阻害する可能性を示している.これは汚染逃避仮説の一種であるといえる.今後は自動車のように中古市場が整備されている財に対して環境規制を導入する場合には,その財の中古市場も注視する必要がある.