抄録
省エネ製品の普及を目的としたリベートプログラムが多くの国々で導入され,日本でも同様のエコポイント制度が近年導入された.本稿は,エコポイント制度が消費者のエアコンの省エネ性能評価にどのような変化をもたらしたのか検証した.市場データを用いたヘドニック価格分析を実施し,消費者の主観的割引率を求めた結果,エアコンの省エネ性能に関して,消費者は先行研究に比べ極端な近視眼的意思決定をしていないことが示された.一方で,エコポイント制度が,消費者の省エネ性能に見出す経済的価値を低下させたことが示された.本稿の結果は,エコポイント制度が省エネ型エアコンを飛躍的に普及させたものの,消費者の省エネによる将来便益の過小評価をむしろ助長させてしまった可能性を示唆している.