2026 年 53 巻 5 号 p. 321-328
【目的】本研究は製造業男性労働者における腰痛と,職域で評価可能な身体機能・生活習慣要因との関連を横断的に検討し,職域で実装しやすい腰痛対策の状態把握項目を整理することを目的とした。【方法】男性59名を対象に横断調査を行い,過去1カ月間に業務中の腰痛を週1回以上経験した者を「腰痛あり」と定義した。質問票により生活習慣および作業姿勢を把握し,身体組成,柔軟性(Straight Leg Raising test:以下,SLR, Finger Floor Distance:以下,FFD),筋力(股関節・膝関節・体幹),身体能力(立ち上がりテスト)を評価した。群間比較を行った後,腰痛の有無を従属変数,SLR, 膝関節伸展筋力,運動習慣の有無,立ち上がりテストスコアを説明変数とするロジスティック回帰分析を行った。【結果】腰痛ありの者は25名(42.4%)であった。ロジスティック回帰分析では,SLR(5°増加あたりオッズ比[odds ratio:以下,OR] 0.29, 95%信頼区間[95% confidence interval:以下,95% CI] 0.11–0.77),膝関節伸展筋力(0.1 kgf/kg増加あたりOR 0.95, 95% CI 0.92–0.99),運動習慣あり(OR 0.04, 95% CI 0.01–0.68),立ち上がりテストスコア(1点増加あたりOR 0.30, 95% CI 0.11–0.79)は,いずれも腰痛の有無と関連した。【結論】柔軟性,下肢筋力,運動習慣,立ち上がり能力は腰痛の有無と関連し,職域での腰痛対策における状態把握項目となりうる。ただし,因果関係は不明である。