2004 年 19 巻 2 号 p. 75-79
加齢に伴う関節位置覚の低下は転倒を助長する危険性がある。関節位置覚の測定は一般的に行われる評価の一つであるが,その測定方法に関しては曖昧な点が多い。本研究では関節位置覚測定における基礎研究として,若年者を対象に関節角度を設定する際の角速度の相違が関節位置覚誤差におよぼす影響について検討した。若年健常44肢を対象にBarrett法を用いて膝関節位置覚を測定した。測定開始肢位は膝関節屈曲90°とした。設定角度は10°ならびに70°とし,それぞれ平均膝関節伸展角速度10°/secと70°/secで角度設定を行った。その結果,設定角度10°では角速度10°/secに比べて70°/secで有意に誤認しやすいことが分かった(P<0.01)。このことから,膝関節位置覚は一部の設定角度において関節角度を設定する際の角速度に影響を受けると考えられた。これらは,メカノレセプターの関与による影響と考えられたが,本研究から明言することはできなかった。しかし,臨床ではこれらの点について留意して関節位置覚の測定を行わなければ,経時的指標にはなりえないと考えられた。