理学療法科学
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19 巻, 2 号
May
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研究論文
  • 増田 幸泰, 西田 裕介, 黒澤 和生
    2004 年 19 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    立ち上がり動作は,パフォーマンスの測定や下肢筋力,歩行能力の推定などに用いられることが多い。本研究の目的は,脳卒中片麻痺者15名を対象として,30秒椅子立ち上がりテストと下肢筋力及び歩行能力との関係を明らかにし,本テストの臨床応用について検討することである。その結果,30秒椅子立ち上がりテストと麻痺側膝関節伸展筋力(r=0.61)ならびに,10 m最大歩行(r=-0.91)との間で相関関係を認めた。30秒椅子立ち上がりテストは30秒間に連続して可能な椅子からの立ち上がり回数を測定するもので,臨床においても簡便に実施できる。また,その測定により脳卒中片麻痺者の歩行能力を簡便に評価できる可能性が示唆された。
  • 杉原 敏道, 郷 貴大, 高橋 玲子, 三島 誠一, 武田 貴好, 有馬 慶美
    2004 年 19 巻 2 号 p. 75-79
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    加齢に伴う関節位置覚の低下は転倒を助長する危険性がある。関節位置覚の測定は一般的に行われる評価の一つであるが,その測定方法に関しては曖昧な点が多い。本研究では関節位置覚測定における基礎研究として,若年者を対象に関節角度を設定する際の角速度の相違が関節位置覚誤差におよぼす影響について検討した。若年健常44肢を対象にBarrett法を用いて膝関節位置覚を測定した。測定開始肢位は膝関節屈曲90°とした。設定角度は10°ならびに70°とし,それぞれ平均膝関節伸展角速度10°/secと70°/secで角度設定を行った。その結果,設定角度10°では角速度10°/secに比べて70°/secで有意に誤認しやすいことが分かった(P<0.01)。このことから,膝関節位置覚は一部の設定角度において関節角度を設定する際の角速度に影響を受けると考えられた。これらは,メカノレセプターの関与による影響と考えられたが,本研究から明言することはできなかった。しかし,臨床ではこれらの点について留意して関節位置覚の測定を行わなければ,経時的指標にはなりえないと考えられた。
  • 村上 雅仁, 加藤 順一, 前田 慶明, 高橋 健太郎, 中野 恭一
    2004 年 19 巻 2 号 p. 81-83
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究は,脳血管障害患者に対してFIMの評価を実施し同時に退院後の転帰先について調査し介護保険導入前後の比較を行なった。対象は,兵庫県立総合リハビリテーションセンターに入院した介護保険導入前の脳血管障害患者464名と導入後の467名とした。結果は,介護保険導入前後の比較を行なうと,入院時および退院時の平均FIM総得点と平均入院期間は有意な差は認められなかった。転帰先は,導入前と比較して在宅退院と転院が減少傾向で施設入所が増大傾向であった。今後,介護保険の利用状況により退院後の受け入れ先の状況が変化するものと考えられた。
  • 峯松 亮, 佐藤 成登志, 立石 学
    2004 年 19 巻 2 号 p. 85-88
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    理学療法士(以下;PT)教育の一環として,地域住民と直接交流のできる地域活動を実施する事は非常に意義深い。学生にとって臨床現場での実習に加え,地域活動は地域住民の医療・保健・福祉の現状を理解する場としても適している。地域活動をPT教育カリキュラムの一環として組み込むために,その試行としての地域活動に学生を参加させ,学生にアンケート調査を行ったので報告する。結果,ほとんどの学生は本試みに賛同し,理由として地域高齢者との交流が持てる事を挙げた。地域活動の中で1)人と接する機会を得る,2)問題解決能力を磨く,3)理学療法への問題意識を持つ,4)主体性を持つ事の4項目を目的に行った。学生は高齢者との交流を通して,主に対人関係(接遇,意思伝達,精神的援助等)の重要性を学ぶことができ,臨床現場への応用,自己学習にも有効との事であった。以上の事から,地域活動は学生へのPT教育の一環として有用な事象になり得ることが考えられる。
  • 新井 啓介, 潮見 泰藏
    2004 年 19 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    脳卒中片麻痺患者44名を対象に起立動作を用いたパフォーマンステスト(10秒間の反復回数)と膝関節伸展筋力ならびに10 m歩行所要時間との関連について検討した。起立動作回数は膝関節伸展筋力(非麻痺側:r=0.67,p<0.01,麻痺側:r=0.75,p<0.01),10 m歩行所要時間(r=-0.75,p<0.01)のそれぞれに有意な相関が認められた。また,本テストの再現性も良好であった。さらに起立動作回数の測定結果をもとに被験者を3群に分類すると,膝関節伸展筋力,10 m歩行所要時間ともに各群の間に有意な差が認められた。以上の結果から,10秒間の反復起立動作によるパフォーマンス測定は簡便で,しかも再現性が高く,さらに,下肢筋力や歩行能力との相関も高いことから,脳卒中片麻痺患者における機能的動作能力の一評価法として有用であると結論される。
  • 西島 智子, 小山 理惠子, 内藤 郁奈, 畑山 聡, 山崎 裕司, 奥 壽郎
    2004 年 19 巻 2 号 p. 95-99
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    この研究の目的は高齢患者の膝伸展筋力と歩行能力の関係について検討することである。対象は高齢入院患者78名(75.7±7.7歳)である。これらの対象について膝伸展筋力と歩行能力を評価した。歩行能力は院内歩行群(n=50),室内歩行群(n=10),歩行非自立群(n=18)に分類した。院内歩行群における膝伸展筋力は室内歩行群,歩行非自立群に比較し,有意に高い値を示した。ロジスティック回帰分析の結果,院内独歩の可否を独立して規定する因子は膝伸展筋力のみであった。膝伸展筋力が0.5を下回る場合,院内歩行自立群は減少し始め,その下限値は0.28であった。0.30を下回る場合,室内歩行の自立割合は減少し始め,その下限値は0.13であった。以上のことから,高齢患者の独歩自立のためにはある程度の下肢筋力が必要なことが示唆された。
  • 中條 友, 大竹 喜子, 渡邊 雅子, 内山 靖
    2004 年 19 巻 2 号 p. 101-106
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    toe clearance(床-足尖間距離)の定量的な解析方法によって,異なる段差での歩行の制御を明らかにすることを目的とした。対象は若年女性22名,段差は平地・0 cm・1.5 cm・18.3 cmの4条件で,toe clearance,足関節角度,歩幅,歩行速度を測定した。ビデオカメラを用いた簡便な方法で,計測精度の高い解析が可能であり,十分な再現性が得られた。toe clearanceは平地(34.5 mm)と0 cm(43.5 mm)では有意な差がみられ,変動係数においても平地(6.1%),0 cm(9.6%)と有意な差がみられた。0 cmでもまたぐことを意識することによって,随意性の高い制御が行われていた。toe clearanceは段差の高さに応じた変化を示し,足関節角度,歩幅,歩行速度に変化がみられた。また,足関節角度に左右差がみられ,軸足・利き足という下肢機能の差の影響が示唆された。以上のことから,異なる段差においてtoe clearanceは複雑な制御が行われていることが明らかとなった。
  • 山本 祐子, 遠藤 美香, 菅原 亜子, 徳原 理恵, 溝辺 夏子, 勝平 純司, 藤沢 しげ子
    2004 年 19 巻 2 号 p. 107-110
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    我が国では,転倒の危険性から妊婦はヒールのない靴を履く習慣がある。また,最近では妊婦は2-3 cmのヒール靴を履いた方がよいという報告もある。しかし,妊婦がヒール靴を履いた際の効果を明らかにした研究は少ない。そこで我々はバイオメカニクスの観点からヒール靴が妊婦歩行に与える影響を調べることを目的とした。妊婦を対象とした研究を行うための基礎データとして,7名の健常成人女性に妊婦体験ジャケットを装着させ,ヒールのない靴と3 cmのヒール靴を履いた際の基礎的な歩行パラメーターと下肢関節モーメントを4枚の床反力計と三次元動作分析装置を用いて計測し比較した。その結果,3 cmのヒール靴を履いた際の足関節底屈モーメントに,4.1%の減少が認められた。このことから,3 cmのヒール靴が足関節底屈筋群への負担を軽減させる可能性が示唆された。
  • 小野 武也, 吉田 京子, 赤塚 清矢, 南沢 忠儀, 宮崎 純弥, 大島 扶美
    2004 年 19 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究は若年女子と高齢女子が行う四つ這い位での四肢挙上運動が背筋筋力増強のための有効な負荷量であるのかどうかについて筋電図を用いて検証した。その結果,背筋の最大伸展筋力は有意に若年女子が高齢女子を上回っていた。また,四肢挙上時の背筋の筋活動は,若年女子では最大で26.6±13.2%,高齢女子では最大で80.7±33.2%であった。このことから,四肢挙上運動は高齢女子の背筋筋力増強運動には有効な負荷量であるが,若年女子に対しては有効な負荷量とは言い難いものであった。今後は背筋の筋力増強運動を行う場合,筋電図などを用いた評価に基づく運動強度を考慮した運動処方が必要と思われた。
  • 鈴木 加奈子, 鈴木 信人, 永峰 幹子, 竹井 仁
    2004 年 19 巻 2 号 p. 115-119
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    立位で胸椎後彎し,身体重心が後方偏位している症例に対し,踵部を補高すると,脊柱伸展ならびに肩関節挙上角度が改善する印象をうける。本研究では,健常成人24名を対象とし,足関節角度を0°,10°底屈位,10°背屈位の3条件に変化させ,その角度変化が立位における矢状面での脊柱彎曲角度,骨盤傾斜度および立位肩関節挙上に及ぼす影響を立位姿勢タイプ別に検討した。立位姿勢は上半身重心と下半身重心の位置関係に着目して前方群,後方群,中央群の3群に分類した。その結果,全群にて3条件間で肩関節挙上角度は変化しなかったが,後方群では底屈位で,骨盤傾斜度と足圧中心位置が変化し,この骨盤傾斜度の変化が肩関節挙上時の骨盤と腰椎の運動に影響を及ぼした。
  • 東 登志夫, 鶴崎 俊哉, 船瀬 広三, 沖田 実, 岩永 竜一郎, 野口 義夫
    2004 年 19 巻 2 号 p. 121-125
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    等尺性収縮時における肘関節角度が肘関節屈筋群の疲労度合いと筋出力に及ぼす影響について検討した。被験者は,健常成人9名とし,被験者全員に対してインフォームド・コンセントを得た。被験者には座位をとらせ,肩関節は0度とし,肩関節,骨盤及び大腿部をベルトにて固定した。肘関節の肢位は,肘屈曲30, 60, 90, 120度の4条件に設定した。実験は,まず最大随意収縮時(maximum voluntary contraction;MVC)の筋出力値を筋力測定装置を用いて計測した。次に被験者に視覚的フィードバックを行いながら,等尺性収縮にて各条件の50%MVCを60秒間以上保持させ,上腕二頭筋と腕橈骨筋から表面筋電図を計測した。筋疲労の指標には,表面筋電図の自己回帰パワースペクトル解析による周波数中央値を用いた。周波数中央値は,60秒間のデータを10秒ごとの6区間にわけ,それぞれの区間における周波数中央値を算出した。その結果,1)最大筋出力が得られたのは,90度であった,2)周波数中央値は,時間経過とともに減少し,その減少度合いは肘関節の屈曲角度が大きくなる程大きい傾向にあった。これらの結果より,最大筋出力が得られる肘関節角度と疲労しにくい角度は異なることが示唆された。従ってセラピストが,運動肢位を決定する際には,その点を十分考慮する必要があると思われる。
  • 小野 武也, 沖 貞明, 越智 淳子, 金井 秀作, 清水 ミシェル・アイズマン, 大塚 彰
    2004 年 19 巻 2 号 p. 127-130
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,ラット足関節底屈位固定に加えて坐骨神経切除の有無がラットの足関節背屈制限およびヒラメ筋の伸長性に与える影響について検討することであった。足関節最大底屈位に固定した固定群,足関節最大底屈位固定に加えて坐骨神経切除を行った固定+神経切除群,コントロール群の3群に分けた。4週後,足関節背屈角度およびヒラメ筋の伸長性はコントロール群が一番大きく,次いで固定群,固定+神経切除群の順であり各群間に有意差がみられた。このことから,末梢神経障害に合併する可動域制限の発生は関節の不動による影響に加え,末梢神経障害による影響が加わっていることが推測された。
  • 渡部 雄樹, 桝谷 真士, 佐々木 誠
    2004 年 19 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    片麻痺患者15例を対象に,安静な端坐位保持(以下,静的課題)と端坐位での側方リーチ(以下,動的課題)の2つの課題遂行中に圧中心軌跡(以下,COP)を測定し,腹部ベルトを装着した場合と装着しない場合とで比較検討した。結果,静的課題のX軸最大移動距離はベルト有りで0.15±0.06 cm,ベルト無しでは0.22±0.12 cmであり,ベルトを装着した方が有意に小さかった(p<0.01)。リーチ距離はベルト有りで21.2±5.1 cm,ベルト無しで19.3±5.6 cmであり,ベルトを装着した方が有意に大きかった(p<0.05)。また,ベルトを装着するとリーチ距離が長かったにもかかわらず,動的課題時のCOPでは条件間に有意差が認められなかった。片麻痺患者の安静な端坐位保持の左右への重心動揺とリーチ動作において,ベルトを装着することにより下部体幹,腰部脊柱の安定性が向上し,腹圧の上昇が良い影響を与えることが示唆された。
  • 寺垣 康裕, 新谷 和文, 末木 恒治, 入内島 弘太, 山内 順子, 臼田 滋
    2004 年 19 巻 2 号 p. 137-140
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    高齢者における脊柱後彎は,動的姿勢調節能力に影響していることが予想される。今回,脊柱後彎の定量的評価を目的とし,当院理学療法施行中の高齢患者に対し,自在曲線定規を用いたMilneらの方法をもとに座位での円背指数計測を実施し,信頼性と妥当性を検討した。その結果,級内相関係数が検者間で0.858,検者内で0.951と共に高い信頼性が得られ,観察による脊柱後彎評価との関連性はSpearmanの順位相関係数が0.819(p<0.01)と有意に高い相関が認められ,円背指数計測は臨床的に利用可能であると考えられた。また,観察による脊柱後彎評価での各段階において円背指数にばらつきが認められたことから,円背指数計測は脊柱後彎を詳細に評価できる方法として有用であることが示唆された。
シリーズ「介護予防」
  • 島田 裕之
    2004 年 19 巻 2 号 p. 141-149
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    東京都老人総合研究所で紹介している介護予防プログラムを概観し,介護予防事業における理学療法士の役割を述べた。介護予防事業は老年症候群の予防・改善を目的とした短期的なプログラムと,行政施策を含めた長期的な計画を組み合わせた包括的な取り組みが必要である。理学療法士は介護予防の中核的な役割を担うべき存在であると考えられる。
  • 古名 丈人
    2004 年 19 巻 2 号 p. 151-155
    発行日: 2004年
    公開日: 2004/06/12
    ジャーナル フリー
    介護状態をもたらすおもな原因は,老衰や転倒・骨折などの老年症候群と呼ばれる生活の不具合である。この老年症候群を予防する戦略を確立するためには,高齢者における健康や心身機能に関する加齢変化の実態を把握する必要がある。地域在住高齢者における縦断的研究によって,老年症候群の発生には運動機能が関係することが明らかになっており,介護予防の主たる手段として運動が重要であることが示唆されている。すでに,運動トレーニングによって高齢者の運動機能が改善することが実証されていることもあり,運動を組み入れた介護予防の需要は大きくなることが予測できる。このような介護予防を展開していく過程では,理学療法士が果たすべき役割は大きいと言える。
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