日本臨床外科学会雑誌
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リンパ節転移を認めた胃GISTの1例
保坂 晃弘輿石 直樹岡崎 護木嶋 泰興
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2003 年 64 巻 4 号 p. 846-850

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抄録

症例は59歳,男性.黒色便と起立時意識消失を主訴に当院を受診し,上部消化管内視鏡にて噴門部後壁の粘膜下腫瘍とその頂部の潰瘍からの出血を認めた.生検にてGISTと診断され,噴門側胃切除術を施行した.術中肉眼所見にて,肝転移,腹膜播種は認めなかったが,噴門部のリンパ節が一部腫大していたため,腫瘍近傍のリンパ節を郭清した.腫瘍は大きさ6×5×5 cmで,免疫組織染色にてGIST, smooth muscle typeと診断した.郭清したリンパ節のうち2個に転移を認めた.術後2年8カ月経過した現在,再発の兆候は認めない.消化管間葉系腫瘍では血行性転移と腹膜播種を認めることが多く,リンパ行性転移は稀である.またリンパ節転移を認める症例の多くはすでに多臓器転移を認め,リンパ節郭清は不要であるという意見が多い.が,本症例のように,肝転移や腹膜播種を伴わずリンパ節転移のみを認める場合,リンパ節郭清が予後改善につながる可能性もあると思われる.

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