抄録
症例は38歳,男性.飲酒運転にて追突事故を起こし,ハンドルにて上腹部を打撲,当院に救急搬送された.腹部超音波検査では腫大した胆嚢内にacoustic shadowを伴わない高エコー像を,腹部CT検査では胆嚢内部の高濃度域と肝表面の液体貯留を認めたため,胆嚢内出血および腹腔内出血と診断された.全身状態が安定していたため,保存的治療を選択した.受傷翌日の採血では貧血が認められたが,超音波検査およびCT検査で腹腔内出血の増加は認められず,手術は見送った.徐々に貧血は改善し,全身状態および肝機能の増悪もみられず,第22病日に退院となった.退院後に施行した超音波検査, CT検査でも胆嚢の器質的,機能的異常所見はなく,保存的治療にて治癒したと考えられた.腹部鈍的外傷による胆嚢損傷は稀であるが,ほぼ全例に手術が行われており,合併症なく保存的に治癒したのは自験例を含め本邦では2例のみであった.