2022 年 14 巻 p. 68-81
保健体育の教職課程では柔道を安全に教えられる指導力の基礎を育む必要があるが,コロナ禍における柔道の専門実技の実施には高い感染リスクが認められる.本研究では,柔道の専門実技における学修成果の保障に向けたバディシステムの導入などの取り組みについて,その成果と課題を検証した.本研究の筆頭著者が柔道の専門実技のTAとして勤務する大学では,新型コロナウイルス感染症の感染拡大を受け,2021年度春学期には5月17日よりハイブリッド授業,5月31日よりオンライン授業を基本とすることによる感染防止策がとられたが,専門実技は例外的に対面実施が許可された.柔道の専門実技では,当初,できるだけ早く指導内容を網羅することを試みたが,後に,学修の深まりの不足への懸念から,身体接触を伴う学習活動に際してペアを固定するバディシステムを導入するという方針転換を行い,バディへの感染リスクを押さえるため,日常生活において濃厚接触に該当する接触者数を記録し,接触者数を減らす意識をもたせる指導も取り入れた.事後的検討の結果,バディシステムの導入には,バディに対する責任を自覚することによる受講生の感染防止意識の向上という意義が認められた.