2023 年 15 巻 p. 193-205
本研究は,31 歳のベテランのプロサッカー選手である筆者が現役プレイヤー存続をかけて取り組んだ技能課題への改善の1 年間の取り組みについて報告,分析した.改善内容は,ディフェンス時のサイドのボール保持者へのアプローチの角度の変更,オフェンス時のバイタルエリアのパス意識を高めること,ルーズボール時のヘディングトレーニングであった.取り組みの分析から,事例対象者が獲得した実践知は以下のものであった. 1)相手ボール保持者の内側への持ち出しを予測して間合いを詰める守備方法は,スプリント力の低下を補うことができ,最終的には,味方選手と連携した守備で対応すること. 2)バイタルエリアへのパスは相手選手のポジショニングを動機にパスを出し,次の展開を想定して恐れることなく配給する必要があること. 3) 基本的なヘディングトレーニングの反復は,ベテラン選手となっても効果が期待され,トレーニング内容は,ベテラン選手から助言を頂くことが有効であること.このような実践知が得られるには,ベテラン選手となっても,自身のプレーを映像やデータを積極的に活用して分析し,技能課題の本質を理解し取り組むことが重要であることが示唆された.