本研究は,自転車競技のポイントレースにおける集団動態を明らかにすることを目的に,全日本選手権ポイントレースを対象とし,競技中の個人間距離と集団間距離を分析した.競技場の観客席にビデオカメラを設置して,半周ごとの全選手の通過時刻を計測し,半周ごとの全選手の平均速度および選手間の距離を換算した.また,ドラフティング効果に基づいて集団を定義し,集団の推移を分析した.その結果,直前の選手との距離間隔は,競技中の90% 以上で3m 以下であり,ほとんどの時間で空気抵抗が低減されるドラフティングの範囲内に位置することが分かった.また,集団の推移には,集団が一つのまま推移する場合,スプリント前に集団が分離する場合,逃げが形成されそのまま逃げ切る場合,逃げが吸収される場合があった.さらに,逃げが形成された場合において,先頭と主集団の先頭との距離は,逃げ切りが成功するか,あるいは,主集団が逃げ集団を吸収して再結合するかを決定づける距離と考えられた.選手やコーチは,逃げ切れるまたは逃げを吸収することができる距離を把握し,競技中の逃げと主集団間の距離を調整することが重要であることが示唆された.